(※写真はイメージです/PIXTA)

老後生活の理想像として、「何もしない時間を満喫する」「好きなときに好きなことをする」といった“自由”を思い描く人は少なくありません。長年働いてきたご褒美として、退職後のゆとりを求めるのはごく自然なことです。しかし、実際に何もない日々が続いたとき、人はどこまで“自由”を楽しみ続けられるのでしょうか。今回は、年金月15万円・貯金3,000万円という安定した老後資金を手にしながら、次第に生活リズムを失い、心身の不調と資金枯渇に悩んだ男性をみていきます。

「時間だけはたっぷりある。でも、何もする気が起きない」

「最初のうちは楽しかったんですよ。目覚ましをかけずに眠って、昼からワイドショーを観て、夕方に散歩して…。それこそ“何もしない贅沢”だと思っていました」

 

そう語るのは、埼玉県に暮らす浅井孝一さん(仮名・69歳)。大手企業の営業職として35年間勤め上げ、63歳で退職。退職金と現役時代の貯金を合わせて3,000万円を確保し、年金月15万円の受給が始まるタイミングで悠々自適なひとり暮らしを始めました。

 

「子どもも独立して、妻とも離婚して。誰にも干渉されない生活に憧れていたんです」

 

しかし、自由な日々が半年、1年と続くうちに、少しずつ心身に異変が現れ始めます。

 

「朝起きる理由がない。人と話す予定もない。何となく気分が落ちているだけと思っていたら、だんだんと外に出るのもおっくうになってきたんです」

 

気づけば、食事はコンビニ弁当ばかり、入浴も2日に1回に。睡眠の質も悪化し、深夜までテレビを観るか、スマホを眺めるだけの生活に陥っていきました。

 

最初は「老後ってこういうものか」と思い込もうとしていた浅井さんでしたが、ある日ふと通帳を見て愕然とします。

 

退職からわずか5年。月々の支出は20〜22万円程度と「派手な生活をしているつもりはなかった」にもかかわらず、口座の残高が、目に見えて減っていることに気づきました。

 

「年金が月15万円あっても、毎月5万〜7万円は確実に取り崩していたんです。冷蔵庫やエアコンの買い替え、歯の治療なんかも一気に来ましたし」

 

浅井さんのように「目に見えない支出」で貯金を減らす高齢者は少なくありません。総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢単身世帯の1ヵ月の支出は約15万円、可処分所得は約12.2万円。毎月約2.8万円の赤字が発生しているというのが実情です。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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