どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

現在の老人ホームの仕事は窮屈になっている

お餅をのどに詰まらせたらどうすの?

 

私が現役の介護職員だった頃と今の介護職員を比べた場合、いったい何が違うというのでしょうか。繰り返しになりますが、ベテラン介護職員や業界関係者の中には、「昔はよかった」「自分が現役だった頃は今よりまともだった」などと言う人が多くいます。しかし、私は本当にそうなのだろうかと、疑問に思っています。

 

今の老人ホームのお正月には、お酒とお餅はないという。(※写真はイメージです/PIXTA)
今の老人ホームのお正月には、お酒とお餅はないという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

ただし、一つだけ言えることは、私が現役だった頃と比べると、今の老人ホームの仕事は、相対的に窮屈になっているということです。コンプライアンスの問題一つとっても、昔とは比べようがないくらい細かく規定されています。おまけに、ハラスメントの類も異常に強化され、仕事上、やりにくいことも多くなっています。

 

たとえば、お正月を迎えると、多くのホームでは正月飾りを出して正月気分を醸し出します。しかし、今の老人ホームのお正月には、お酒とお餅はありません。私が現役だった頃も、ホームの基本方針としては、お酒は自室で、お餅は原則禁止でした。これが建前です。

 

しかし以前は、多くのホームで、施設長やホーム長の判断で「会社はそう言っているけど、正月ぐらいお餅を食べないと気分出ないよね」などと適当な言い訳をつけて、管理者が振舞ったものです。私も管理者だった頃、お正月は金紛入りの日本酒を、お酒の好きな入居者全員の食事のテーブルに黙って置いたものでした。正直、費用は大した金額ではありません。ほんの数千円です。しかし、その効果は絶大。複数の元吞兵衛入居者が、かわるがわる事務所に来ては嬉しそうにお礼を言って帰ります。中には、「施設長はわかっているな」などと過大な評価をしてくれる入居者もいました。

 

お餅もそうです。特に私が勤務していた老人ホームは、当時業界の草分けだった関係で、運営には特に厳しく、入居者にお餅を食べさせるなんて言語道断という会社でした。もし、お餅をのどに詰まらせて入居者が窒息したらどうするの?という問題提起をし、結論は「食べない」ということに落ち着きます。食べなければ事故は起きないからです。

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