どうやって老人ホームを選んだらいいのか? それには入居者の生の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。現在、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『老人ホーム リアルな暮らし』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

救急車到着後2時間受け入れ病院見つからず

リアルに疑似体験─老人ホームの24時間

 

入居者や家族は、老人ホームの日常をぜひ理解してほしい。これから書くことが実態であり、これが真実です。ここでは、介護付き有料老人ホームの一日を、時間軸で説明していきたいと思います。提供されるサービスの手厚さと利用料金は、比例しています。料金によっては、ここで記載されていることをしてもらえないホーム、逆に、さらに手厚くしてもらえるホームがあるということに、留意してください。

 

名ばかりの医療連携がまかり通る

 

今では、そんなことはないとは思いますが、私が介護職員だった頃は、医療連携をしている医療機関の医師に指示を仰ぐために電話をすると「何時だと思っているのか?救急車を呼べばいいじゃないか!」ガチャンなんてことは当たり前でした。本当に腹立たしいことです。

 

名ばかりの医療連携。自分たちで救急車要請しても……。(※写真はイメージです/PIXTA)
名ばかりの医療連携。自分たちで救急車要請しても……。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

もちろん、これは契約違反の行為ですが、医療機関に対して老人ホームは文句を言える立場ではなく、「嫌なら協力医療機関なんていつ辞めてもいいんだからな」と脅かされたものです。一番の被害者は、当然入居者になります。主治医からの助言がない場合、自分たちで救急車を呼び、病院に搬送することになりますが、ここでまた大変なことが起きます。救急隊は迅速に来てくれますが、その後の受け入れ先病院を探すのが一苦労なのです。

 

私の経験では、救急車に乗せてから、病院に向けて救急車が発進するまでに2時間かかったことがあります。救急隊と職員は、手分けをして病院に受け入れを要請します。多くの場合、入居者別に通院している病院リストが整備されていますから、まず通院している病院から電話をしていきます。

 

認知症状のある100歳の入居者が居室内で転倒し、意識はありましたが、大腿骨を骨折している可能性が高い時の話です。救急隊と病院とのやり取りを救急車の中で聞いていると、100歳の老人と言った瞬間に断わられる病院が続出。受け入れてくれそうな病院がやっと見つかったと思ったら、認知症がある高齢者は受け入れないと電話を切られたり、散々です。

 

信じられないことに、普段、定期的に通院している病院ですら、受け入れ拒否なのです。結局、2時間後に3次救急を担っている遠隔地の大学病院が受け入れてくれ、やっと救急車は病院に向けて出発しました。十数年以上前の話にはなりますが、これが日常茶飯事でした。

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