認知症高齢者のもう一つの「顔」
夜勤帯ではありませんが、私が介護職員として、認知症高齢者をある病院に受診同行した時の話です。待合室で待つ私の耳に「何言っているかわからないんだよ!こんな話のわからない患者なんか連れてくるなよ!帰ってもらえ!」という怒鳴り声が聞こえてきました。
もちろん、この声の主は医師です。看護師がすまなそうに私のところに来て頭を下げていましたが、当時の私は介護職員として未熟者だったので、「医療のプロである医師のくせに、認知症の高齢者の診察一つできないのか!藪医者」とかみつき、怒鳴り返したことがあります。しかし、よくよく考えてみれば、重度な認知症の患者を、専門医でない医師が診察するという行為は難しいのが現実なのだと思います。もちろん、言葉使いは考えなくてはなりませんが。
さらに、救急対応時に忘れてはならないことは、その後のホーム内での業務についてです。多くのホームでは、救急車に夜勤職員が同乗し病院まで付き添うため、残された職員がその他の入居者の夜勤帯業務をしなければなりません。つまり、職員1欠状態で通常業務をしなければならないのです。当たり前の話ですが、救急対応のことなど、他の入居者にとっては、知ったことではありません。容赦なくナースコールを押し、いつものルーティン業務をいつものように求めてきます。ごくごく少数の自立している入居者には、事実を説明すると「今日は自分でやるから、私はいいわ」と協力してくれる方もいますが、多くの認知症高齢者には、それが通用しません。正直、自分のことしか考えていない悪魔のような人たちに見えることもあるのです。
そうこうしているうちに、病院に同行した介護職員、またはホーム長がホームに戻ってきます。介護現場出身のホーム長の場合、そのまま介護業務に加勢してくれるので、職員は大いに助かります。逆に、そうでないホーム長の場合は、病院に残り介護職員をホームに返すのが普通です。さらに、早番や日勤帯の担当介護職員が連絡を受けて、早出をしてくれます。特に早番や近隣に住む介護職員が早朝に来てくれた時など、地獄に仏とは、まさにこのことだと痛感したものです。
繰り返しになりますが、たとえ、入居者が深夜や明け方にホーム内で死のうと、倒れようと、多くのホーム入居者にとっては、それはいっさい関知しないことなのです。毎朝、7時に起き、介護職員に顔を洗ってもらい、着替えを手伝ってもらい準備万端、8時には朝食をいつものように食べなければならない人たちです。今日は、急変があって大変だったので朝食は8時30分からお願いします、などと言おうものなら大騒ぎになってしまいます。これが高齢者のもう一つの「顔」ということになります。
小嶋 勝利
株式会社ASFONTRUSTNETWORK常務取締役
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