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「100万円くらい…」平穏だった親子関係が変わった日
佐伯正俊さん(仮名/75歳)は、東京都下の団地で妻と2人暮らしをしています。大学職員として長く勤め、65歳で退職。現在の年金収入は月20万円ほどです。贅沢はできないものの、夫婦2人が節約して暮らすには十分でした。
ある春の日、息子の健一さん(仮名/48歳)が突然訪ねてきました。開口一番、こう切り出したといいます。
「父さん、相談があってさ。来月、悠斗が中学に入るだろ? うちもいろいろお金がかかってさ……その、入学祝いで100万円、お願いできないかなって」
正俊さんは思わず聞き返しました。
「100万円!? 祝い金って……そんな大金、急にどうしたんだ」
健一さんは悪びれる様子もなく続けます。
「え、祖父母って普通もっと出すもんじゃないの? 友達の親なんて、孫に大学進学で200万円ポンと出したっていってたし」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がざわついたといいます。正俊さん夫婦の貯金は1,000万円に届くか届かないか。老後の生活費として、月20万円の年金に加えて、毎月3万円ほど取り崩しているのが現実です。平均寿命まで生きると仮定すれば、決して余裕があるとはいえません。
「悪いけど無理だよ。いまの生活で精一杯なんだ」
そう告げた瞬間、健一さんの表情が変わりました。
「父さんって、ケチだよな。俺たちだって苦しいのに、助けようともしないの?」
妻の靖子さん(仮名)があいだに入り、場を収めようとしたものの、言い争いはさらに激しくなります。そして、全身を震わす正俊さんの口から、長年の親子関係を揺るがすひと言が漏れました。
「……そんなふうにしか俺をみられないなら、もう顔をみせるな」
温厚な人柄で知られていた正俊さんが、怒声をあげたのは初めてでした。

