「介護職員の質が下がった」という評価は本当か
介護職員の仕事の真実
介護とは何でしょうか。私は、介護職員に求められているスキルのひとつに「お節介」があると考えています。しかし、今の時代は「お節介」は、「余計なこと」になってしまいます。だから、多くの介護職員は「余計なことをしない」という選択肢を選んでいます。余計なことをしないということは、言葉を換えれば、考えることを止める、ということに他なりません。考えることを止めれば、余計なことを考えなくなるので、余計なこともしなくなります。
しかし、必要なことも考えなくなって、必要なこともしなくなります。その結果、少なくとも入居者やその家族からは、毒にも薬にもならない人、気が利かない人、という評価を受けることになるのです。もちろん、以前は、この、毒にも薬にもならない人とは、どちらかというと悪い評価でしたが、今は「普通の人」という評価だと思います。
「介護職員の質が下がった」と言われて久しい昨今。たしかにそのような事実はあると、私も思います。しかし、そのすべてが介護職員個人だけの問題だとは、どうしても思えません。私の経験と流儀で言わせていただけるのであれば、介護職員は入居者や家族が育てるもの、育てられるものだと思っています。
お金を払って何で介護職員を育てなければならないのか、という方もいるでしょうが、少なくとも私は、介護職員として入居者やその家族からたくさんのことを学びました。社会的に地位のある立派な方々からは、社会の常識を、認知症の入居者からは、人としての生き様を学んだつもりです。そして、その学びのすべてが、今の仕事に役立っています。私のような浅学者に対し、書籍の執筆というチャンスをいただけたのが、何よりの証拠ではないでしょうか。
老人ホームへの入居を考えている読者の皆様やその家族の方に、あらためてお願いがあります。
介護職員が仕事に「挑戦すること」に対し、許容するチャンスを与えてはいただけないでしょうか。今の介護職員の多くは、仕事に萎縮し、希望もなく、そして、いつ辞めようかを毎日考えながら仕事をしています。もちろん、介護職員の中には、その風上にも置けないような職員もたしかに存在します。そのような職員が多いと嘆く老人ホーム経営者も多くいることは、承知しています。