モーニングケアを早朝4時に開始するワケ

リアルに疑似体験─老人ホームの24時間

入居者や家族は、老人ホームの日常をぜひ理解してほしい。これから書くことが実態であり、これが真実です。ここでは、介護付き有料老人ホームの一日を、時間軸で説明していきたいと思います。提供されるサービスの手厚さと利用料金は、比例しています。料金によっては、ここで記載されていることをしてもらえないホーム、逆に、さらに手厚くしてもらえるホームがあるということに、留意してください。

けっして、悪気があってやっているわけではない。職員には職員の都合がある

私がホームに訪問し、職員にヒヤリングをすると、モーニングケアを朝の4時ごろからスタートしているホームがあります。朝の4時から？早すぎないの？と、普通は思います。中には、モーニングケアが完了し、朝の5時ごろから食堂のテーブルに車椅子で座らされている入居者もいます。多くの入居者は車椅子に座り、うとうとしています。「なんてひどい」と思う読者もいるのではないでしょうか。しかし現実に、このようなホームも少なからず存在します。

老人ホームは自宅より安全かつ安心な場所であるがゆえに……。（※写真はイメージです／PIXTA）

理由はいったい何でしょうか？答えは簡単です。朝食開始時間から逆算してすべての入居者の準備が終わる時間を積算した場合、この時間からスタートしないと間に合わないからに他なりません。間に合わない理由は、モーニングケアを必要とする入居者が多い場合と、勤務している職員が少ない場合のどちらかか、または両方です。

私の経験でも、夜勤者は、深夜0時以降は、朝食時間に合わせて自分たちの行動を組み立てていきます。シフト表を確認しながら、朝、助けに来てくれる早番のメンバーを確認し、その職員ひとり一人のスキルに合わせて、ZさんとXさんのモーニングケアはA職員に依頼、YさんとWさんのモーニングケアはB職員に依頼、朝食会場のセッティングはC職員に依頼などと考えて業務をイメージしていきます。万一、早番職員から体調不良で急きょ欠勤するという連絡などが入ろうものなら、組み立てた業務フォーメーションをやり直し、業務の再検討を行ない、業務をスキップしていかなければなりません。つまり、何が何でも朝8時には朝食を食べ始め、9時前には朝食が完了していなければならないのです。

そこまで拘る理由は何でしょうか。それは、前にも述べた通り、老人ホームの場合、朝8時に朝食を食べることができないと気が済まない入居者がたくさんいるからです。たとえ、隣りの入居者が死のうと苦しくのたうち回ろうと、そんなことはお構いなしで、朝8時になったら、朝食はスタートしなければなりません。でなければ、何で食べられないのかと大騒ぎになります。