収益不動産と自宅を保有し、悠々自適のひとり暮らしを続けてきた母親。長男はアメリカ、次男は妻の地元に生活基盤を持ち、いずれも故郷に帰る予定はありません。しかし、母親の不動産は老朽化が進み、放置できない状態になってきました。同時に、母親の体調にも変化が見えはじめ…。離れた場所に暮らす息子たちは、どう対処したらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
故郷でひとり暮らしの高齢母は「アパートオーナー」
今回の相談者は50代の会社経営者、石川さんです。石川さんは兄との2人兄弟で、父親は15年前に死去。故郷には高齢の母親がひとりで暮らしています。
石川さんの兄は仕事の関係でアメリカに居住しており、長らく日本を離れています。いずれは日本に帰国する予定ですが、当分先になりそうです。石川さんは、20代のころには一般企業に勤めていましたが、妻の親族のつてを頼って30代で独立。妻の故郷で事業を拡げ、今は従業員を数十人抱える会社を経営しています。
石川さんの父親は会社員でしたが、親から相続した土地を活かし、40年近く前から自宅に隣接したアパートを建て、賃貸業を経営してきました。そのため、父親が亡くなったあとも、母親は年金と家賃収入で生活に困ることはありませんでした。とはいえ、アパートも築40年近くなり、老朽化が進んでいます。母親はここ数年、アパートの建て替えを検討しており、入居者が退去したあとも募集をかけず、現在は半分が空室の状態となっています。
しかし、母親が80代に差し掛かったころから、次第に買い物などの日常生活に支障をきたすようになりました。そこで、石川さんは兄と相談し、母親に自分が暮らす自宅近くの老人ホームに転居してもらうことにしました。その提案については、母親自身も快諾しています。
とはいえ、石川さんは相続のことが気がかりです。空き家となる実家と、老朽化したアパートにも相当の相続税がかかることが予想されます。今後どうすればいいのかアドバイスがほしいということで、筆者のもとに相談に来られました。
●相続人関係図
相談者 : 次男(50代)、会社経営
家族構成: 母親・長男(50代、アメリカ在住)・次男(依頼者)
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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