新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

音楽は消費財の一種の使い捨てになる

逆に音楽はiTunesなどの音楽配信を使って聞くものとなりつつあります。2018年のレコード・音楽配信の市場を見ると、音楽ソフトの売上はオーディオ・レコードが1576億円で対前年比9%の減少となっているのに対し、音楽配信サービスは645億円と対前年比で13%の増加となっています。音楽配信サービスは5年連続で売上を伸ばしています。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

音楽配信はダウンロードと呼ばれるインターネットから楽曲を購入して自分の端末などに取り込んで楽しむものと、ストリーミングといってインターネットに接続しているときだけ楽しむものに分かれます。最近はダウンロードが減少し、月額などの定額制で自分の好きなジャンルの曲を楽しむストリーミングが成長しています。18年ではダウンロードによる配信は256億円で対前年比5%の減少になっているのに対し、ストリーミングは349億円で対前年比33%もの高い伸びになっています。

 

以前は音楽好きといえば、自宅などに大量のCDをコレクションすることを自慢したものですが、最近では、音楽はただ聞き流すものとなってきたようです。そしてみんなが同じ流行歌を口にすることは少なく、ネット上でなんとなく流れている歌を仕事しながら、あるいは家事をしながら聞くというBGM的な存在に変化しているのです。音楽も消費財の一種のように寿命は短く、使い捨てになってきているとも言えるでしょう。

 

映像の世界も同様です。これまでのように映画館にたくさんの人を集めて観るものから、個人の家に配信するものになってきました。映像配信が行なわれる前でも、DVDレンタルで借りてきた映画を自宅で鑑賞することは可能でした。しかし、現在ではレンタルに替わって配信サービスを受けられるようになっています。

 

「STAY HOME お家にいて」と、東京都の小池百合子知事はコロナ禍の不安におびえる都民に対して優しく語りかけましたが、さて緊急事態宣言がゴールデンウィークに跨ることとなると、お家で何をしようということになります。映像配信のアマゾンプライムやネットフリックスなどの配信元へは申し込みが殺到しました。

 

最近では8Kテレビが登場するなど、受信機器の技術も発達しました。自宅でも迫力の映像、音質を楽しむことができるようになっています。何もわざわざ都心に出かけて密な空間で映画を観なくとも、自宅で寝転がって好きな食べ物でもつまみながらのほうが、体も楽です。映画は配信の時代に急速に転換していくことでしょう。

 

このように音楽や映像がみんなで一堂に集まって楽しむものから、個々人の家に配信されて楽しむようになると、人々の鑑賞の仕方が変わります。大音量や迫力の映像も巨大な映画館のスクリーンや音響施設で成り立ったものが、いくら技術が良くなったとしても家庭のテレビでは限界がある。音楽も同じです。したがって高い評価を受ける作品の選定にも影響が出てくるかもしれません。

 

ハリウッド的な娯楽作品がこの世から消滅するとは思えませんので、テレビ画面でも伝わるような双方向の技術などが今後開発されてくるでしょう。映画、音楽の世界でもポスト・コロナ時代は新しいステージが開かれることになりそうです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

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