前回は、国内不動産と海外不動産それぞれの特徴と投資のポイントを取り上げました。今回は、高額納税者の節税手段として「不動産投資」が有益な理由を見ていきます。

給与から「減価償却費」を引いた確定申告が可能に

高額納税者にとって不動産運用による節税効果は非常に大きなメリットです。不動産から得た収入は、勤務医としての給与所得と合算する「損益通算」をして確定申告することができます。

 

 

これだけ聞くと特別なこととは思えないかもしれませんが、株やFXで得た不労所得は損益通算の対象にはなりません。これが、株やFXの値上がり益にかかる税率が一律約20%という部分です。

 

給与と合算できるのは事業所得だけであり、ここが株やFXと不動産運用の決定的な差です。事業所得は、家賃などで得た収入から減価償却費や金利といった費用を事業損失として差し引いて計上することができます。減価償却とは、事業を行うにあたって必要な建物や高額な設備などの購入費を、一度に経費計上しないで何年かに分けるという考え方です。

 

建物などは大変高額なので、たとえば法人の場合は一度で経費計上してしまうと、その年の決算が大赤字になる可能性があります。また、このような建物や高額な設備は1年限りの消耗品ではなく数年にわたって使用できるものなので、使う年数に応じて小分けに計上するのが合理的ともいえるでしょう。

 

国ではそれぞれの物品に耐用年数を定めています。計上する金額は、購入金額をその年数で割ったものになります。主な物品の耐用年数は次のようになっています。

 

鉄筋コンクリート(RC造)住宅:47年(病院用は39年)

木造住宅:22年

給排水、ガス設備:15年

普通自動車:6年

コピー機、テレビ:5年

パソコン:4年

 

不動産運用を行えば、必要不可欠な建物やOA機器などの減価償却費を、勤務医としての収入から差し引いて確定申告できるのです。

 

ここで高額納税者にとってなぜ損益通算できる不動産運用が向いているかを具体例で説明しましょう。

 

たとえば勤務医としての給与所得が年間1,500万円だった場合、税率は所得税と住民税で43%、納税額は645万円(分かりやすくするために各控除は考慮しません)になります。

 

ここで1億円の物件(自己資金1,000万円、銀行からの融資9,000万円)を購入すると、減価償却費や金利、登記代、火災保険料、リフォーム代などが経費として認められ、減価償却費が約450万円、金利が約150万円、その他を合計すると約1,200万円が経費として計上できるわけです。

 

ただし、この物件は家賃収入が年間約1,000万円ありますので、差額の200万円が損益通算できます。すると、給与所得1,500万円から不動産運用損の200万円を引いた1,300万円が課税対象となり、559万円(1,300万円×43%)が納税額となります。物件を持たないときの納税額が645万円ですから、不動産運用することで86万円の節税が実現しました。

 

このように不動産運用は、高額納税者になればなるほど節税効果が期待できます。

 

不動産運用の節税効果は、あくまでも初期の付加価値

ここで「200万円の不動産運用損に対して、節税効果が86万円では、114万円のマイナスではないか」と気づいた人も多いでしょう。

 

「114万円のマイナスではないか」と気づく、鋭い医師。 (画像はイメージです/PIXTA)
「114万円のマイナスではないか」と気づく、鋭い医師。
(画像はイメージです/PIXTA)

 

しかし、運用損には「減価償却費450万円」が含まれていることに注目してください。この減価償却費450万円というのは、損益通算上マイナスとして計上していますが、実際に皆さんの手元にある現金等のキャッシュが減るわけではありません。

 

つまり1,200万円の経費には、毎年払うことのない建物の減価償却費が半分近くを占めているので、実際には現金が手元に残ります。そのうえで給与所得と損益通算できることで節税効果もあるのです。

 

もちろん不動産運用は黒字経営が大前提です。この前提がなければやる意味がありません。一方で不動産運用をはじめてから1〜2年は、リフォーム代など様々な諸経費がかかるため、マイナス決算になることは想定しておくべきです。

 

不動産運用では、この期間を過ぎてからの黒字化を目標とします。黒字になれば、当然給与所得と合算しての節税はできなくなります。

 

したがって不動産運用にとって、節税効果はあくまでも初期の付加価値と考えてください。長期的には、家賃収入によるインカムゲインによって資産を増やしていくことが第一となります。

 

「医師の信用力」で融資を受け、物件を購入

不動産運用はほかの投資方法に比べ、シンプルかつ安定したスキームで資産10億円を実現できます。その流れを非常に簡単に説明すると以下のようになります。

 

(ステップ1)医師ならではの信用力で融資を利用して物件を購入

 

現在、日本の一般的な物件価格は、ワンルームマンションなど安価な物でも2,000万~3,000万円、一棟買いなら数億円に上ります。いくら高所得な医師でも現金で買える人はあまりいないでしょう。しかし、信用度の高い医師ならば比較的スムーズに融資を受けることが可能なので、資金調達に困ることはありません。

安定収入を増やし、更なる投資で資産を増強

(ステップ2)毎月安定した家賃収入が得られる

 

不動産運用の最大の魅力は、いったん入居者が決まると継続して家賃収入が得られることです。これによって計画的、安定的なローン返済が可能です。つまり自身の給与や貯蓄から出費することなく物件を入手することができるのです。

 

(ステップ3)運用実績を活かして複数の物件を所有する

 

最初の不動産運用が軌道に乗れば、銀行はさらなる融資をする可能性が高まります。この機会に複数の物件を所有します。もちろん返済は家賃からなので自分の懐は痛みません。つまり単純に考えれば、2億円の物件を5棟所有すれば、資産10億円が達成できるということです。

 

そんなに上手くいくはずがない、と思う人がいるかもしれませんが、実際に私のクライアントの多くはこのようなスキームで資産10億円を実現しています(関連記事『年収1500万円前後だが…勤務医が「資産10億円」になれるワケ』参照)

不動産運用の成功の鍵は「立地条件」と「管理体制」

不動産運用の成功の鍵は、なんといっても立地条件と管理体制です。

 

この2つが優れた物件を購入できれば、あとは管理会社に任せることで毎月の安定収入が確保できます。不動産運用に対する専門的な知識はほとんど必要ありません。株やFXのように経済や世界の情勢などに対して常にアンテナを張り巡らせる必要はないのです。日々忙しいドクターにとっては、本当に相性の良い投資といえるでしょう。

 

とはいえ、さすがに何も知らないのは不安という人のために、基本的な不動産運用にかかわる指標を紹介します。

家賃収入や不動産の運営管理に関わる指標とは?

GPI(Gross Potential Income:潜在総収入)

満室・滞納なしを前提とした1年間の家賃収入の総額

 

EGI(Effective Gross Income:実効総収入)

GPIから周辺相場の空室率を差し引いた空室損、一括借り上げの手数料、滞納者がいる場合の未回収損を差し引き、さらに駐車場や自動販売機などの雑収入を足した実際に入ってくる収入。EGI=GPI−空室・各損失+その他収入

 

OPEX(Operating Expense:運営費用)

物件の運営管理にかかる費用や固定資産税・都市計画税、損害保険料などランニングコストの合計

 

NOI(Net Operating Income:営業純利益)

EGIから固定資産税などの税金、不動産管理会社への手数料、共用部分の電気代や水道代などの運営費を差し引いた金額。NOI=EGI-OPEX

 

利回りや返済、税金に関わる指標とは?

Cap Rate(Capitalization Rate:キャップレート、総合還元利回り)

オーナーの期待する不動産還元利回り。実際には、リスクのない長期国債の利回りに、不動産のリスクに応じて期待する上乗せ収益と、物件固有のリスクに応じて期待する上乗せ収益(地域・築年数・構造など)を合算して導き出されるケースが多い。Cap Rate=NOI÷物件価格

 

ADS(Annual Debt Service:年間総返済額)

年間の利息と元利の返済総額。元利均等返済の固定金利ローンの場合、ADSは毎年一定額となる。ADS=年間元金返済額+年間利息返済額

 

BTCF(Before-Tax Cash Flow:税引前キャッシュフロー)

NOIからローンの年間総返済額(ADS)を差し引いた、最終的に手元に残る金額。BTCF=NOI−ADS

 

ATCF(After-Tax Cash Flow:税引後キャッシュフロー)

収入を得たことによって発生する税金を引いたものが税引後キャッシュフロー。対象物件に不動産投資したときに発生する税金などを引いた実際の収益。ATCF=BTCF−TAX

 

LTV(Loan To Value:借入金割合)

借入金額の物件価格に対する割合。LTV=借入額÷物件価格

 

FCR(FreeandClearReturn:総収益率)

NOIを物件価格や諸費用など物件を購入するために費やした金額で割った数値。総コストに対して物件がどれだけの収入を生んでいるかを示す指標。FCR=NOI÷総投資額

 

K%(Loan Constant:ローン定数)

ADS(年間返済総額)のローン残高に対する割合。K%とFCRを比較することによって、レバレッジ効果が働いているかどうかの判断ができる。K%=ADS÷現在のローン残高。

 

CCR(Cash on Cash Return:自己資本配当率)

BTCFを自己資金で割ることで算出。自己資金に対してどれだけのリターンがあるのかが分かる。C on C%、EDR、ROE、ROIと言うこともある。CCR=キャッシュフロー÷自己資金

 

DSCR(Debt Service Coverage Ratio:借入償還余裕率)

NOI(営業純利益)をADS(年間元利返済額)で割ったもの。ローン返済の何倍の収入があるかを算出し、大きければ大きい程リスクが低く、小さければ小さい程リスクが高くなる。DSCR(借入償還余裕率)が1以下であればデフォルトの状態。DCR=NOI÷ADS

指標よりも、指標を使った業者の提案を吟味する

不動産運用にかかわる指標はこのほかにもたくさんあります。投資家のなかには、まるで受験生のように時間を費やしてこれらを覚え、さらにこれらの指標から割り出した合格ライン以上の物件探しに躍起になっている人がいます。

 

しかし本来、このような指標による物件の分析は、我々のようなプロに任せればいいのです。プロならばこのような指標による分析のほかにも、これまでのノウハウや業界の情報を考慮して、世の中に何万棟とある収益物件のなかから顧客にとって最適な物件を見つけ出すことができます。

 

指標には現れない「この土地柄だからあなたに向いている」「たしかに現状のBTCFは少ないが、新サービスでの開業は可能」といった提案ができるのがプロです。忙しい皆さんが一生懸命ノートに書き込んで計算するべきではありません。

 

指標の理解はそこそこで結構ですから、あとはその指標を使って説明する不動産業者の提案の中身を吟味してください。

 

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