医師と不動産投資の「相性」は抜群に良いというが…?
時間のない医師にもっとも適するのは、損をしにくく節税効果も高い不動産運用。しかしながら、当然どんな物件を購入しても損をしないわけではありません。一言で収益物件といっても中身は千差万別です。プロでさえ、常に最新情報を入手するために努力を続けていないと時代の波に乗り遅れてしまいます。
では、医師が最初に買うべき物件はどのようなものなのでしょうか。本記事では建物の話からはじめましょう。
収益物件には、主に次のような種類があります。
●新築木造アパート
●新築鉄骨造アパート
●新築RC(鉄筋コンクリート)造マンション
●中古木造アパート
●中古鉄骨造アパート
●中古RC(鉄筋コンクリート)造マンション
どれを選ぶかは、予算、立地など他の条件によってケース・バイ・ケースですから、一概にこれがいいとは言えません。
ただし、一つ言えるのは新築、中古問わず木造は避けたほうが賢明だということです。木造はイニシャルコストは安いのですが、劣化が早いためランニングコスト、つまりメンテナンス費用が多くなりがちです。その証拠に減価償却期間の基準となる法定耐用年数があります。RC造が47年であるのに対して、重量鉄骨造は34年、木造だと22年と圧倒的に短くなります。
木造の耐久性が劣る主な部位は外壁と屋根の防水処理です。木造は、地震などに対してある程度揺れることで損傷を防ぐ柔構造なので、これらの劣化が早くなるのです。いずれも15年前後ごとに修繕工事が必要となり、100万円単位の費用がかかります。そのほかにも思わぬ部位が傷んで、収支計画が狂ってしまうことが少なからずあります。
もし、このような修繕を怠ると、以下のような状況が発生します。
修繕をせず放置
↓
劣化が進み家賃を下げざるを得ない
↓
同時に入居者の不満もたまり空室率が上がる
↓
収入が減少し修繕したくてもできなくなる
↓
劣化が進み家賃を下げざるを得ない
このような悪循環に加え、「家賃の値下げによってモラルの低い入居者が集まり家賃滞納が増大する」「地震や台風で劣化した設備が落下、入居者がケガをして損害賠償が発生」といったトラブルも想定できます。
立地は「首都圏をはじめ大都市または海外」…
一方で鉄骨やRC造は、地震力に対して変形しない剛構造です。外壁や屋上の防水処理が木造ほど早く劣化することはありません。またRC造マンションの外壁の多くはタイル貼りなので、基本的にほとんど劣化しません。メンテナンスフリーです。
ただし、鉄骨造、RC造問わず1981年以降に完成した物件を選ぶようにしましょう。阪神淡路大震災では、1981年以前に建てられた建物に特に多くの被害が出ました。それは、この年の6月に建築基準法が改正され、これ以降に完成した建物の耐震性が大幅に上がっていたからです。
もし、より安心な物件を求めるなら「住宅性能表示制度」の耐久性等級3を取得している物件を選べばいいでしょう。
同制度は2000年に施行された品質確保法によって、第三者機関が物件の耐久性や耐震性などの性能を評価(任意)するものです。建築基準法が定める最低基準が「等級1」、60年程度の耐久レベルが「等級2」、90年程度の耐久レベルが「等級3」となっています。「等級3」のマンションには「100年コンクリート」などと呼ばれている強度の高いコンクリートが使用され、長寿命が期待できます。メンテナンス費用がかかりにくく、入居者に対しても安心感のアピールができるといった意味でお勧めです。
最後に、もう一つ建物の構造に関して考慮していただきたいのは、「将来、物件内に病院を開業するとなった場合、患者がどのような印象を持つか」です。木造アパートの1階にある病院と、RC造マンションの1階にある病院を想像してみてください。信用度はどちらが上でしょうか?
内装に関しては木質感があったほうが、患者さんは癒されることもあるでしょう。しかし、それは木造だけでなくどの構法でも実現可能です。また、木造の場合は5年から10年ごとの白アリ防除工事が必須になります。費用がかかるうえに、人によっては床下に散布した薬剤によって健康に悪影響が出る可能性も否定できません。
立地は「首都圏をはじめ大都市または海外」、建物は「木造以外」――これが筆者がお勧めする収益物件の最低条件です。
もっとも安価な中古鉄骨造アパートでも1億円は必要
物件選びについてだいたいの目処が立ったら、あとは、実際に物件と不動産会社が作成する収支計画書を吟味していきましょう。ただし、決めるといっても大前提として予算がなければ購入できません。
●新築鉄骨造アパート
●新築RC(鉄筋コンクリート)造マンション
●中古鉄骨造アパート
●中古RC(鉄筋コンクリート)造マンション
このなかでもっとも安価なのは中古鉄骨造アパートです。しかし、これでも首都圏の物件で安定した入居率を期待できるレベルの物件なら1億円ほどになります。
中古ワンルームマンションの区分所有ならば2000万円前後で購入可能ですが、中古は入居者に敬遠されがちなため、一括借り上げ契約の条件が悪くなります。また、そもそも2000万円程度の物件を所有していても、本記事が目標とする資産10億円への道ははるか彼方。やはり最初から区分所有ではなく一棟を狙うべきです。
医師は年収の20倍前後の資金を銀行融資から引き出せる
一棟を狙う場合には、最低でも1億円の予算は確保しておきたいところですが、いくら高所得なドクターでも、キャッシュで1億円を持っている人は少ないでしょう。しかし、全く問題ありません。実際に筆者のクライアントであるドクターの多くは、1000万円前後の自己資金で不動産運用をはじめているのです。
なぜそのようなことが可能なのか? それは、医師の特性によって年収の20倍前後の資金を銀行から借りることができるからです。
医師という職業は、融資を行う銀行にとって弁護士や会計士と並ぶ最上位の個人属性です。しかも、この最上位という属性の効果は今後さらに高まっていくはずです。なぜなら、一般的なサラリーマンは今後あまり収入が上がらないといわれているからです。
これから日本経済は好景気に向かうと思われますが、それは企業側だけのこと。収益を上げた企業は、経済のグローバル化によって法人税の低い海外に拠点を移していくことも増えていくかもしれません。
日本の法人税率は、世界でもトップクラスの高さだと言われています。今後も企業の日本離れは止められないでしょう。日本企業は海外へ資本を投入し、市場開拓と同時に雇用も現地で行うようになります。現地のことは現地の人間に任せたほうが効率も上がりますし、何より人件費が安いからです。
そこで取り残されるのが日本のサラリーマンです。新聞やニュースなどでは「ボーナスが〇%アップ」などといっていますが、それはあくまで一時的なボーナスで固定給は変わっていないところがほとんどです。すでに高い賃金を支払っている日本のサラリーマンに、企業側はこれ以上の増額を考えないでしょう。