本記事は、大山一也氏の著作『資産10億円を実現する医師のための収益物件活用術』から一部を抜粋、再編集したものです。

収益物件は不動産サイトで探してはいけない…

自分が住む前提でマンションを探すなら、多くの人はまず不動産ポータルサイトを見るでしょう。しかし、収益物件に関してはこの方法はお勧めできません。必ず専門の不動産会社を探していろいろと直接相談するべきです。

 

確かに現在の物件探しの主流はインターネットです。希望の物件があるエリアにわざわざ行かなくても、建物の様子や価格、利回りなどの情報を簡単に入手できます。

 

「スーモ」や「ホームズ」「ヤフー不動産」といったメジャーなサイトから、「楽待」「クリスティ」「健美家」など収益物件の専門サイトまで多種多様。日本全国すべての情報が網羅されているように感じます。「これだけの情報があれば、いくらでもお宝物件が見つかりそう」と思ってしまうでしょう。

 

サイトに表示されているおもな利回りは「表面利回り」

ところがそれが落とし穴です。まず収益物件を探す中で、もっとも気になる利回りからして鵜呑みにはできません。

 

利回りとは物件価格に対する年間の家賃収入の割合です。たとえば1億円の物件の家賃収入が年間1000万円なら利回りは10%となります。つまり、10年で物件購入価格を回収できるということ。この数値が高ければ高いほど収益性の良い物件ということになります。

 

ところがサイトに表示されているおもな利回りは「表面利回り」です。これは満室状態の家賃収入から割り出したものです。実際には常に満室にできるわけではありませんし、基準となる家賃もいずれ下げなくてはならない事態になるかもしれません。さらに物件の状態によってはすぐに補修工事が必要になる場合もあります。

 

本来、利回りというものは、物件やその周辺地域が持つそれぞれの特徴を加味した「実質利回り」を指すべきです。しかし、ほとんどのサイトの情報からはそれを読み解くことはできません。

厳格に決まっている不動産広告の表示ルール…13の基準

不動産ポータルサイトの情報は極めて少ないものが目立ちます。時間があれば各物件の詳細な情報を確認してみてください。「間取りが分からない」「写真がない」、中には「価格と住所以外の情報がない」といった圧倒的に情報がスカスカの物件が本当にたくさん見つかるはずです。

 

さらにその情報も正確かどうか分かりません。そこには同業者としては、はずかしながら不動産業者のモラルの問題があります。そもそも不動産表示に関する公正競争規約では、嘘をつかないことはもちろん、消費者が不動産を選ぶ際に表示するべき事項が定められています。

 

不動産広告には以下の事項についてバラバラな表示とならないように、いろいろな表示基準があります。

 

●物件の内容・取引条件等に係る表示基準
 1 取引態様
 2 物件の所在地
 3 交通の利便性
 4 各種施設までの距離または所要時間
 5 団地の規模
 6 面積
 7 物件の形質
 8 写真・絵図
 9 設備・施設等
 10 生活関連施設
 11 価格・賃料
 12 住宅ローン等
 13 その他の取引条件
●節税効果等の表示基準
●入札及び競り売りの方法による場合の表示基準

 

たとえば、4「各種施設までの距離または所要時間」の場合の基準は、徒歩時間は1分で80メートルとして表示することになっています。また、不動産広告は「宅地建物取引業法」と「不当景品類及び不当表示防止法」によっての誇大広告が禁止されています。

 

そこで公正競争規約では、次のような用語について表示内容を裏づける合理的な根拠がある場合を除き、その使用を禁止しています。

 

 特選、厳選
 日本一、抜群、当社だけ
 完全、完ぺき、絶対
 格安、掘出、底値
 完売など著しく人気が高く、売行きが良いことを意味する用語
 最高、最高級など最上級を意味する用語

 

皆さんは新聞折り込みの不動産チラシなどで「眺望最高」「日当たりバツグン」といった売り文句を日常的に見ていませんか?残念ながら不動産業界はいまだにこのようないい加減な業者が多いため、広告の信用性も高いとはいえないのです。

サイト情報にまつわる悪質な業者の手口

業者のモラルという意味では、以前私のところへ相談に来た医師でこのような人がいました。

 

彼は不動産運用に関してすでにかなり勉強しており、インターネットを駆使してある中古物件を見つけました。現状で満室。しかも利回りが周辺の相場よりも若干高く、価格も手が届く範囲だったそうです。直接現地へ行って物件を確認しましたが、特に問題は見当たりません。そこで購入を決意。ローンの審査もすんなり通り、売買契約をします。

 

ところが数日後、再度現地に行くと衝撃の事実が。2階の1部屋にカーテンがなく、どう見ても入居者がいる気配もないのです。急いで仲介した不動産会社に駆け込み、問いただすと「満室という表示がありましたか? それならサイト運営会社のミスですね」と言われたそうです。

 

その開き直りぶりから、どう考えてもわざととしか思えません。そこで知り合いの医師の紹介で私のところに相談に来たわけです。結局この契約はさまざまな交渉の末、解除できました。

 

悪質な不動産業者は、このようなマンガや小説にしか出てこないようなセコい手で何とか成約に結びつけようとします。やはりサイト情報の内容には細心の注意が必要といえるでしょう。

物件だけでなく、街の周辺環境もチェック

不動産ポータルサイトの情報は正確なものがほとんどですが、情報が足りないものや正確性にかけるものもあります。いざ希望に合う物件を見つけたとき、それを買うべきかどうか、どのような基準で判断すべきでしょうか。

 

まず、その地域の人口動態や産業構造などから「どれだけ高い入居率を維持できるか」を
調べる必要があります。これらはインターネットで検索したり、役所などの公共サービスに問い合わせれば分かるはずです。総務省のウェブサイトには各種の情報が公開されています。


さらにその地域の不動産会社へ行き、周辺の入居率を聞いて回るのも有効です。現地を訪れるなら周辺の環境もチェックしましょう。商業施設や病院など生活に不可欠な施設がどこにあるのか。単身向けならコンビニへの距離、ファミリー向けなら学校への道のりなどを確認。学校への道のりは距離だけでなく車の交通量も見ましょう。また周辺環境としては、葬儀場やお墓などいわゆる嫌悪施設が近くにないかも重要です。

 

このような周辺環境のチェックは、実際に住む人の気持ちになることが大切です。自分で
も「これは住みやすい街だ」と思えれば合格でしょう。

物件購入の決断には「生の情報」が必要不可欠

物件そのものの目のつけどころは、まず見た目です。見た瞬間にくたびれた印象を持つよ
うであれば、相場よりもよほど家賃を下げるか、リフォームをしないと満室は望めないでしょう。あまりに奇抜なデザインも避けた方が無難です。

 

さらに基礎にヒビが入っていないか、中に入ったときに傾きを感じないか、妙な湿気はな
いか、などをチェックします。

 

傾きに関しては水平器やスマートフォンのアプリで測れますし、室内のドアや窓を開け閉
めして引っかかりの有無で確認できます。湿気を感じるようなら雨漏りや水漏れのおそれがあります。内装のきれいさやデザインは比較的安価に改善できますが、構造的な傷みは多額の費用を要します。ここは入念にチェックしたいところです。

 

不動産ポータルサイトでこのようなリアルな情報を得るのは、ほぼ不可能でしょう。結局物件購入の決断には生の情報が必要なのです。サイトの情報はあくまで相場感をつかむ程度と捉えていた方が無難です。

 

また多忙な方が生の情報を得るには、パートナーとなる不動産会社と二人三脚でいくのが最短・最善の方法です。

 

「立地」と「利回り」だけでは黒字経営は困難

物件情報を得たくても、場所を絞り込んでいなければ得ようがありません。医師に限らず一般的に、はじめて収益物件を買おうとする人は、自宅周辺で探そうとします。土地勘があることや常に管理状態を確認したいからでしょう。その気持ちはよく分かります。

 

しかし、残念ながら理想的な条件が揃った物件はそこかしこにあるわけではありません。自身の土地勘があるようなエリアで物件を探すのはあまりにも範囲が狭すぎます。

 

収益物件を探すならその範囲は全国、または世界に目を向けるべきです。なぜなら土地選びでもっとも重要なことは、そこに住む人がたくさんいること。つまりたとえ空室になったとしても、すぐに次の入居者が見つかる可能性が高い人口密集地であることです。しかも収益物件の経営は、20年、30年と長期にわたるので、その時点でも人口を維持していることが必須条件になります。

 

ところが今後の日本は人口が減っていくことが予想されます。国立社会保障・人口問題研究所では、次のような推計を公表しています(2012年1月推計)。

 

2010年の人口1億2805万7000人を100とする。

2025年の人口は1億2065万9000人で94.2。

2040年の人口は1億727万6000人で83.8。


25年後の人口はおよそ2割減ってしまうのです。しかし、地域によっては減少率が低いところがあります。それは東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の一都三県です。

 

東京都は2025年まで現状維持で2040年でも93.5。

神奈川県は2025年まで99.6でほぼ現状維持、2040年でも92.2。

埼玉県は2025年で97.2、2040年でも87.6です。

千葉県は2025年で96.3、2040年でも86.2となっています。

(2010年を100としたときの指数。2013年3月推計。)


これらの都県は、全国平均よりも減少率が低く推計されています。地方で同じように2040年の減少率が低い県を挙げると、愛知県(92.5)、福岡県(86.3)などがあります。

 

このような数字から一都三県をはじめ大都市圏が、収益物件を経営する上で理想的な立地であるといえます。

 

とはいえ、これはあくまで一般論。確かに人口が多い場所の物件を買うことは確実な戦略です。収益物件を取り扱う不動産業者のほとんどは、この立地条件にプラスして利回りを売り文句に営業を展開しています。「こんなに交通の便がいいですよ。しかもこれだけ高い利回りがありますよ」。営業トークはこれだけです。

 

しかし、人口減に突入した昨今、この立地+利回りだけでは黒字経営を維持するのは困難です。この2つの条件にプラスして周辺のライバル物件に対して差別化できる何かが必要なのです。

人口密度と同じくらい「医師密度」が重要に

その何かとはどんなものか?

 

それは「周辺エリアの医師の数」、そして「コンセプト」です。医師が不動産運用をする際は、人口密度と同時に周辺の医師の数も視野に入れるべきです。

 

たとえば埼玉県の大宮駅周辺。大宮駅はJR埼京線で新宿へわずか30分の好立地。JR東日本の2013年度乗降客ランキングでは新橋駅に次ぐ8位(1日平均24万5479人)の巨大なターミナルステーションです。ところが大宮駅がある埼玉県は、厚生労働省が発表している「人口10万人対医師数」ではワースト1位なのです。

 

すなわち日本でもっとも医師が不足している県であり、開業するにはお勧めのエリアといえます。

 

収益物件を探すというと、人口密度の高いエリアにばかり目が行きがちです。しかし人口が多いエリアほど物件価格も高い。ところが医師であれば、人口密度と同じくらいそのエリアの「医師密度」も重要です。この基準は一般的な不動産価値とは違うので、医師にとっては魅力的な物件を安く購入することも可能になるわけです。そして、将来その物件を医療関係施設として開業すれば、不動産の価値は大きく高まります。

 

医師が不動産投資に強い理由とは…?
医師が不動産投資に強い理由とは…?

不動産の付加価値…コンセプトとは何か?

不動産運用で収益を上げる秘訣は、安く買ってその後に付加価値をつけることであり、これは鉄則ともいえるでしょう。

 

その付加価値とはいわゆる「コンセプト」です。たとえ一般的には人気の低いエリアでも、医師ならではのコンセプトがプラスされたとき、その物件は周辺のどの物件よりも収益率の良い存在になります。

 

たとえば詳細は後ほど説明しますが、シングルマザーの多い土地柄なら託児所を併設した
「シングルマザーシェアハウス」や、高齢者が多い地域ならおじいちゃんやおばあちゃんが日帰りで利用できる「デイサービス付き高齢者住宅」といったオーナーが医師であることを活かしたコンセプトです。

 

ほかにも、かつて医大生だった頃にどんな賃貸マンションが欲しかったか、今オーナー医師として何かアピールできることはないかを考えて、医大や大きな病院近くの物件を医大生や看護師向けの賃貸住宅にするといったコンセプトもあります。定期的に情報交換会を開催したり、エントランスなどの共用部分に専門書の貸出コーナーを設けるなどで差別化を図るのです。

 

このように医師ならではのコンセプトを明確に打ち出せれば、多少人口の少ない地方都市でも十分に経営が成り立つはずです。同時にシングルマザーや高齢者がイキイキと生活できるといった地域の活性化にも役に立てるでしょう。

 

逆にいくら都心に近く、いい立地でもコンセプトがない平凡な物件では選ばれる理由がなく、建物が老朽化するにしたがい、入居者募集が困難になるはずです。

 

ただし、どんなに画期的なコンセプトでも、過疎地のような人が集まらない土地はおすすめしません。町おこしなどの地域の活性化は行政が動かないと難しいものがあります。やはりある程度の人口規模が下地にあった上でのコンセプトといえます。

海外不動産投資・進出でも「コンセプト」を重視

また、「周辺エリアの医師の数」「コンセプト」という土地選びの視点はなにも国内に限ったことではありません。

 

現在は人もモノもグローバル化しています。かつては「メイド・イン・ジャパン」がもてはやされましたが、今は「メイド・バイ・ジャパン」に変わっています。

 

このような流れの中では、海外の物件を購入して現地で医療サービスを提供するという手も十分勝算があります。たとえば定年退職した人の移住先として人気の高いマレーシア、フィリピン、タイ、インドネシア、カナダ、カンボジアなどが狙い目です。

 

所有している物件からきちんと家賃収入があれば、勤務医として過酷な状況で働かなくても物価の安い海外なら十分暮らせるでしょう。海外で気ままにリゾートライフを送りながら、現地で移住者を対象に開業もけっして夢ではありません。

 

右も左も分からない海外での開業など現実的ではないと思うかもしれませんが、海外でも経験豊富なエージェントに仲介を依頼すれば問題はありません。実際、私は知り合いの医師と一緒にカンボジアで事業を始めています。

 

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    本連載は、2015年1月30日刊行の書籍『資産10億円を実現する医師のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

    資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

    資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

    大山 一也

    幻冬舎メディアコンサルティング

    旧来の医療体制が瓦解し始めた今、医師たち一人ひとりに求められているのは勤め先の病院に頼らない、自らの開業をも見据えた確固たる基盤づくりであり、なかでも最も重要なのは資産形成である。資産形成にはさまざまな方法があ…

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