「貧乏医師」にならないためには、勤め先の病院に頼らず、自分自身で資産を増やしていく行動が大切です。本記事では、医師が賢く資産を形成するための効果的な方法を紹介していきます。*本記事は、2015年1月30日刊行の書籍『資産10億円を実現する医師のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

勤務医の年収は1500万円前後だが…

幸い医師の皆さんは一般的なサラリーマンよりも収入が多い。これは資産形成の上で、非常に大きなアドバンテージになります。

 

勤務医の年収は1500万円前後ということですから、平均月給にすれば100万円から120万円。一方で35歳から39歳男性の平均年収は498万円、40歳から44歳は561万円ですから確かに高所得です。

 

高所得ではあるが、とんでもなく激務な勤務医の実態……。 (画像はイメージです/PIXTA)
高所得ではあるが、とんでもなく激務な勤務医の実態……。
(画像はイメージです/PIXTA)

 

この現状をまず確認した上で、それではここから、一体どのくらいの資産を形成することを目指すか? 行動するにしても目標が定まらないと、どのような動きをすればいいかが見えてきません。

悠々自適な老後生活には最低でも「数億円」が必要!?

目標として皆さんは、将来いくらぐらいの資産を希望しますか? たとえば仮に最終ゴールを開業とすればどうでしょうか? 開業資金を蓄えるといっても場所や診療科目によってさまざまですが、土地と建物、そしてX線撮影装置や超音波診断装置などの各設備を含めて、最低でも1億円は必要でしょう。

 

さらに家庭に必要な資金を忘れてはいけません。子どもの教育費であれば、医学部を目指すなら、その6年間の学費は国公立大学に入学の場合で約350万円。しかし、私立ならば多くが3000万円前後、高い大学なら5000万円近くになります。子ども2人なら6000万円以上です。

 

そのうえ悠々自適な老後生活を送ることを考えると最低でも数億円・・・。

 

しかし、心配には及びません。これをサラリーマンの平均年収から資産形成しようと思えば、難しいと言わざるを得ませんが、皆さんは幸運にも医師です。筆者がこれまでコンサルティングしてきた経験から言って、最低でも3億円は堅い。現実的に考えて5億円は普通に達成できます。

 

しかし、まずは目標ですから、ここは10億円と設定してみましょう。できれば資産10億円あれば理想ではないでしょうか。しかも開業や教育費を考えると、できるだけ早い時期にこの金額を達成したいところです。そこで本連載では5年以内に資産10億円を目指すことにします。

「普通預金・定期預金」で資産は形成できない

医師の高収入を活用する方法はいろいろありますが、医師向けの有名なポータルサイト「m3.com」の2013年の調査では、医師の資産運用に関する調査結果は次のように出ています。

 

「どのような資産運用をしているか」という問いに対して一番多かった答えが「普通・定期預金」(74.2%)。そして「株式」(21.8%)、「何もしていない」(20.6%)と続き、「不動産投資」は7番目(7.4%)でした。

 

『金持ち父さん貧乏父さん』の著者ロバート・キヨサキ氏は、資産とは「あなたのポケットにお金を入れてくれるもの」と言っていますが、資産はすなわちそのもの自体がいつでも現金化できて、定期的に収益を生み出してくれるものでなければいけません。

 

ところが調査結果で一番多かった「普通・定期預金」の金利は0.02%から0.3%(2014年11月現在)といったところです。1000万円預けても年間2000円から3万円の利息です。これでは前述のような「資産」とはいえません。

プロがしのぎを削る世界で10億円を稼ぐのは至難の業

一方で株式はどうかというと、デイトレードの世界ではその売買は1秒を争います。少しでも目を離すとチャンスを失います。比較的長期の保有を前提とするにしても、ビジネスの動静には常に目を配っておかなければなりませんし、そもそも「目利き」ができなければなりません。毎日寝る間を削ってまで激務をこなし続ける皆さんに、株の値動きをチェックする時間があるでしょうか? とても定期的に利益を生むとは思えません。

 

「株式」と僅差で「何もしていない」が3番目に来ていることから、現状ではほとんどの医師が資産運用を行っていないことが分かります。手軽な副収入ということでは、近年はインターネットショップやアフィリエイトも人気のようです。

 

しかしインターネットショップは、商品の仕入れから在庫管理、受注の対応、商品の発送などをすべて行わなければなりません。従業員を雇うなら可能かもしれませんが、軌道に乗る前にそこまで準備を整えるかどうか考えものです。

 

アフィリエイトとは、インターネット広告の課金方式の一つです。最初にウェブサイトやブログを開設し、そこにネット広告を貼り付ける必要があります。その広告を見た一般の閲覧者が、そのリンクを経由して広告主のサイトで会員登録や商品を購入したりすると、一定の料率に従って媒体運営者に報酬が支払われるというものです。

 

当然、そのサイトやブログを頻繁に更新しないと、閲覧数を伸ばすことができません。結果的に誰からも広告を見てもらえず自然消滅に、ということがほとんどのようです。どちらにしても超多忙な医師の皆さんには向かないでしょう。

 

そもそも世界中のプロ中のプロが常にしのぎを削っている株やネット関連ビジネスで、10億円を稼ぐのは至難の業です。草野球の経験もない素人が、プロ野球で4割バッターを目指すようなものです。投資した金額を回収するのさえ難しいでしょう。こんな可能性の低いことに時間とお金を使うべきではありません。

 

不動産運用による資産形成は医師にとっては容易!?

筆者は基本的に時間のない医師にとって理想的な資産運用方法は、以下の3条件に当てはまることが必須と考えます。

 

1.予備知識がそれほど必要ない

2管理に時間を取られない

310億円の資産形成の道筋が具体的に描ける

 

この3条件を満たす数少ない選択肢はそうはありません。その数少ない選択肢の一つが不動産運用です。

 

不動産運用による資産形成は比較的単純なので、それほど苦労せずに身につきます。超難関の医師国家試験に合格した皆さんにとっては余裕でしょう。管理に関しては、プロの管理会社が行います。資産形成の道筋は、収入源が安定した家賃なので着実に描けます。

医師という職業は最上位の個人属性のひとつ

不動産運用が、医師の資産形成にとって最適である理由を2つ挙げましょう。それは、

 

1.レバレッジを効かせやすい

2節税効果がある

 

ということなのです。節税効果を享受できるのは、高収入である医師の皆さんにしか当てはまらないことです。しかも不動産にしかできないものです。

 

そしてレバレッジが効くというのは、融資額の上限が大きいということです。これは医師という職業が弁護士などと並ぶ最上位の個人属性だからです。しかもこの最上位とその他の差は今後さらに開いていくでしょう。今後も一般的なサラリーマンの収入はあまり上がらないからです。

 

これから好景気に向かうと書きましたが、それは企業側だけのことです。収益を上げた企業は、経済のグローバル化によって今後ますます法人税の低い海外に拠点を移していきます。

 

日本の法人税率(法定実効税率)は、約36%と世界でもトップクラスに高い。一方でシンガポールや台湾など東南アジアは10%台。欧米諸国でも20%台後半です。政府は今後5年以内に6%程度引き下げると言っていますが、その程度では企業の日本離れは止められないでしょう。

 

このような中、企業は海外へ資本を投入し、市場開拓と同時に雇用も行います。現地のことは現地の人間に任せた方が効率はいいし、何より人件費が安いからです。

 

そこで取り残されるのが、日本のサラリーマンです。新聞やニュースなどでは「ボーナスが○%アップ」などと書かれていますが、それはあくまで一時的なボーナスで、固定給は変わっていません。すでに高い人件費の日本のサラリーマンに、これ以上の収入増は見込めないでしょう。

資産運用を成功させるカギは「レバレッジ効果」にあり

ある銀行員が「年収5000万円の外資系会社員と年収1500万円の医師なら、医師の方にお金を貸す」と言っていました。

 

また、筆者のクライアントの女医は、育休中にもかかわらず、一発回答で融資審査が通りました。しかも医師だからという理由で、サラリーマンなら絶対あり得ない金額を借りることができました。

 

信用力がある医師だったからこそ、このように数年先の年収、いわゆる「見込み年収」で融資を受けることが可能だったのです。

 

政府は景気対策のため、今後も金融緩和を継続するでしょう。すると金融機関にはお金が余っていきます。インフレが進む中、人口の大多数を占めるサラリーマンの収入は上がらず、リストラもあり得る。ならば少数でもお金持ちへ。その中でも将来の安定性が約束された医師、特に勤務医―といったロジックで金融機関は、今まで以上に医師へお金を貸したがるのです。

 

金融機関はたとえ現在の年収が少なくても、不動産運用のためならば、最上位の個人属性である医師に、より低金利でより多額の融資をしてくれます。

 

その上限額の目安は、年収の20倍前後。年収1500万円なら3億円です。一般的なサラリーマンなら10倍がいいところ。年収500万円ならば5000万円です。3億円あれば都心近くに20戸ほどの鉄筋コンクリート造マンションが買えます。家賃が月々10万円なら年間の家賃収入は2400万円です。

 

5000万円ならば、地方都市に8戸ほどの木造アパートといったところです。家賃が月々5万円なら年間の家賃収入は480万円。年収は3倍なのに家賃収入は5倍。レバレッジ効果は運用額が大きいほど有効に機能するのです。いかに医師が不動産運用に向いているかが分かります。

 

資産運用を成功させるためにもっとも重要なカギは、この「レバレッジ効果」です。レバレッジ=てこ。つまり少ない資産を元手に、大きな取引をすることです。

 

筆者は医師以外にも高所得者の知り合いが多数いますが、不動産運用をしないで10億円以上の資産を持っている人を知りません(オーナー社長が上場益を得るケースが一部でありますが、医療法人の上場は認められていません)。

 

確かに10億円以上の資産を持つ人の多くは、不動産運用以外にも株などの複数の収入源を持っています。しかし、彼らはこれらで稼いだお金を最終的に不動産購入の頭金へ回します。結局、安定的に億単位の収入を得る手段は不動産なのです。

借金をしない限り「レバレッジ効果」は生まれない

医師が資産10億円を目指すなら、不動産運用が最短距離といえます。それは資金を融資してもらうことによってレバレッジ効果が期待できるからです。

 

融資とは借金です。そう捉えること自体は間違いではありません。しかし、借金という言葉には、日本人特有の価値観が埋め込まれてしまっています。日本人は「借金=悪」と考える人が多い。「借金しない?」と聞くとほとんどの人が「とんでもない!」と答えるでしょう。事業資金を借りると聞いても、後ろ向きに捉えるようです。

 

子どもの頃からお金についての教育を受け、「起業」も盛んな欧米と違い、日本では借金に対して小さい頃からこのようなイメージを植え付けられているからでしょう。しかし、私たち資産運用の専門家から見れば、それはただの「食わず嫌い」です。借金に対する正しい認識を持つ必要があります。

 

「レバレッジ効果=借金効果」

 

経営学的にはこのような式が成り立ちます。借金をしない限りレバレッジ効果は望めません。レバレッジ効果(借金効果)を利用すれば、同じ1500万円の年収でもリタイア後には資産数千万円と10億円の違いが生まれるのです。

 

たとえば借金が怖い人は、住宅ローンを繰り上げ返済でできるだけ早く返そうとします。しかし、よく考えてください。現在の住宅ローンの金利は1%から2%といったところです。こんなに低金利なら放っておいて構いません。繰り上げ返済するお金があるなら、7%や8%の利回りの不動産運用に回した方が得だからです。

 

確かに運用するには金利2%から3%の借金をすることになりますが、それでも繰り上げ返済をするより手元に残る資産は多くなります。さらに不動産運用には、節税というメリットもあります。

 

また金融機関は、株やFXの運用資金を融資の対象外にしています。なぜならこれらは価値がゼロになる可能性があるからです。

 

一方で不動産運用は、不動産自体に担保価値があり、家賃収入も見込めるので、融資の対象になります。経営に対して素人の人間が、一般的な金融機関から借りられる事業資金は、不動産運用以外にあまり見当たりません。

 

万が一、ローンの返済ができなくなったとしても不動産は売却可能ですし、普段は医師としての収入で生活していれば、路頭に迷う可能性は極めて低いといえます。それどころかそれまでの家賃収入が貯蓄として残るのです。

 

ちなみに、ほとんどの勤務医、特に公的病院に勤めている場合は副業が禁止されているはずです。しかし、親からの相続といったことも想定される不動産の運用は、禁止対象から外れます。医師だから活かせる最大のレバレッジ効果。この最大の武器を利用しない手はありません。

 

とはいえ、多忙を極める皆さんが、このような金融知識を得る時間がないことは十分承知しています。そのため医師が不動産運用で成功するには、その道にくわしい不動産会社や会計士などの専門家を事業パートナーに持つことが最重要といえるでしょう。

何もしなければ、収入のおよそ半分は税金に消えていく

本記事では医師の皆さんに効率よく資産形成していただくために、不動産の運用をお勧めしています。その理由のうち、最も直接的に、かつ端的にそのメリットを実感してもらえるのは医師にとって、極めて節税効果が高いということです。

 

皆さんは毎年納税している額に驚いたことはありませんか?

 

所得税の税率は年収900万円を超え1800万円以下なら33%、1800万円超なら40%。しかも2015年からは4000万円超で45%となります。年収1500万円なら33%の495万円。さらに10%の住民税もかかるので合計43%の645万円が税金として消えていきます(分かりやすくするために各種控除額は考慮していません)。

 

つまり税金や保険料を差し引いた自由に使える可処分所得は、数百万円といったところです。額面上は一般的なサラリーマンの倍以上稼いでいるにもかかわらず、実際に自由に使えるお金は、ほぼ同等なのです。

 

世間では高給取りと思われながらも、稼いだお金のおよそ半分は自動的になくなってしまうこの現実。筆者のクライアントの医師たちの多くは、

 

「稼いでも稼いでも税金で取られる」

「ものすごく忙しく働いているのに、これだけしか残らないのはむなしい・・・」

「税金のために働いているようだ!」

 

と言っています。

 

それはそうでしょう。645万円といえば35歳から39歳男性サラリーマンの平均年収より150万円も多い。たとえるなら自分自身でエリートサラリーマン1人を雇っているようなものです。人々のために一生懸命働いているのに、いくら税金とはいえそんな大金が毎年無くなっていくことが悲しくないはずはありません。

 

しかし、いくら悲しんでも何もしなければ自動的に納税しなければならない。今の皆さんはまさに武器を持たない「丸腰」なのです。

不動産運用による収入は給与所得と損益通算が可能

皆さんのような高額納税者にとって不動産運用は非常に相性がいい。なぜなら不動産から得た収入は、勤務医としての給与所得と合算する「損益通算」してから確定申告できるからです。

 

これだけ聞くと当たり前のように思うかもしれませんが、株やFXで得た不労所得は損益通算できません。これらは給与とは別途に計算し、その額に応じて納税しなければならないのです。給与と合算できるのは、事業所得だけです。ここが株やFXと不動産運用の決定的に違うところです。

 

不動産は日本経済を左右する要です。だから国策として不動産に関する収益は税制上優遇されているのです。

 

事業所得は、家賃などで得た収入から減価償却費や金利といった費用を、事業損失として差し引いて計上することができます。減価償却とは、事業を行うにあたって必要な建物や高額な設備などの購入費を、一度に経費計上しないで何年かに分けるという考え方です。

 

建物などは大変高額なので、たとえば法人の場合は一度で経費計上してしまうと、その年の決算が大赤字になる可能性があります。また、このような建物や高額な設備は1年限りの消耗品ではなく数年にわたって使用できるものなので、使う年数に応じて小分けに計上するのが合理的とも言えるでしょう。国はそれぞれの物品に耐用年数を定めています。計上する金額は、購入金額をその年数で割ったものになります。

 

おもな物品の耐用年数は次のようになっています。

 

●鉄筋コンクリート(RC造)住宅 47年(病院用は39年)

●木造住宅 22年

●給排水、ガス設備 15年

●普通自動車 6年

●コピー機、テレビ 5年

●パソコン 4年

 

不動産運用を行えば、必要不可欠な建物やOA機器などの減価償却費を、勤務医としての収入から差し引いて確定申告できるのです。

 

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本連載は、2015年1月30日刊行の書籍『資産10億円を実現する医師のための収益物件活用術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

資産10億円を実現する 医師のための収益物件活用術

大山 一也

幻冬舎メディアコンサルティング

旧来の医療体制が瓦解し始めた今、医師たち一人ひとりに求められているのは勤め先の病院に頼らない、自らの開業をも見据えた確固たる基盤づくりであり、なかでも最も重要なのは資産形成である。資産形成にはさまざまな方法があ…

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