不仲な夫とは、離婚しないまま別居を続け、20年以上経過。ある日突然の義姉からの連絡で、夫の死を告げられました。相続財産は、夫が生活していた自宅建物と土地、あとは預貯金と保険金です。すると義姉から、もともとは自分の両親のものだった自宅を相続放棄してほしいとの申し出が…。詳しく調べてみると、自宅不動産にはある問題がありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
年金生活の女性に届いた「夫死亡」の知らせ
今回の相談者は、60代の桑原さんです。桑原さんは夫と不仲で、離婚はしていないものの、別居生活は20年以上にも及びます。以前は会社員でしたが、現在は勤務先を定年退職し、自宅マンションで、年金と趣味を兼ねたパート収入を得てのんびり生活しています。親から相続した預貯金もあります。
少し前、桑原さんのところへ夫の姉から、夫が病死したとの連絡が入りました。長年別居しているとはいえ、まだ配偶者の立場にある桑原さんは法律上の相続人です。
桑原さんの夫の財産は、自宅の土地・建物、預貯金、生命保険です。約3,000万円の生命保険は桑原さんが受取人になっており、後日、生命保険会社から振り込まれました。しかし、1点問題があります。夫が暮らしていた自宅不動産のことです。これはもともと夫の父親の所有であり、義姉からは「どうせあなたが住むことのない家だし、そもそもうちの実家のものなのだから、何年も別居してきたあなたには、相続放棄してほしい」と申し入れられているそうなのです。
どのように対応すべきか迷い、筆者のもとに相談に見えました。
●相続人関係図
相談者 :桑原さん(60代)
被相続人:夫(60代)
相続人 :妻(相談者)・長女(30代)
資産状況:自宅(3,000万円)、預貯金(2,000万円)、生命保険(3,000万円)
じつは桑原さんが別居することになった原因のひとつに、義姉との関係があります。義姉は桑原さんの夫をなにかと頼り、結婚後もしょっちゅう訪れては、桑原さんにはわからない知り合いや親族の話ばかりしたり、些末な相談ごとを持ち掛けては、夫を桑原さんの元から連れ出そうとしていたとのことです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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