不仲な夫とは、離婚しないまま別居を続け、20年以上経過。ある日突然の義姉からの連絡で、夫の死を告げられました。相続財産は、夫が生活していた自宅建物と土地、あとは預貯金と保険金です。すると義姉から、もともとは自分の両親のものだった自宅を相続放棄してほしいとの申し出が…。詳しく調べてみると、自宅不動産にはある問題がありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
夫が暮らしていた自宅の名義は「亡父」のまま
筆者が桑原さんの夫の財産について調べたところ、夫が暮らしていた自宅の土地・建物は、夫の父親名義のままでした。義父・義母は10年以上前に他界しているため、本来ならば夫とその姉が相続人なのですが、夫が亡くなっているため、桑原さん(=配偶者)とその長女が、代襲相続人となります。
桑原さんは、義姉からの申し出である、夫が暮らしていた自宅不動産の相続放棄について、筆者や筆者の会社のスタッフ、そして長女と何度も話し合いを重ね、実際の数字を確認するだけでなく、ご自分の気持ちの整理も続けました。その結果、義姉の希望通り放棄することを決め、亡夫の代わりに手続きを行うことになりました。
「私が離婚に踏み切らなかったのは、意地を張る気持ちがあったからですが、それだけではなく、夫への愛情も少なからず残っていたからではないかと思います」
「私の家庭が壊れた原因に、義姉の存在があったのは確かです。でも、あちこちにいい顔をしたがる夫にも問題はありました」
「義姉は離婚することになったため、実家だったあの家に戻りたいそうなのです。自宅不動産の相続を放棄するよう頼まれて、複雑な持ちになったのは事実ですが、夫は私を受取人にした保険金を残してくれていましたし、預貯金も残してくれました。娘からは〈お母さんには終の棲家もあるし、生活にも困ってないし、あの家のことはもういいじゃない〉といわれて。相続放棄で義姉とキッパリ縁が切れるなら、私もそれがいいかなと…」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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