不仲な夫とは、離婚しないまま別居を続け、20年以上経過。ある日突然の義姉からの連絡で、夫の死を告げられました。相続財産は、夫が生活していた自宅建物と土地、あとは預貯金と保険金です。すると義姉から、もともとは自分の両親のものだった自宅を相続放棄してほしいとの申し出が…。詳しく調べてみると、自宅不動産にはある問題がありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
夫婦の間に割り込んできた義姉…結婚生活は破綻
夫は世話焼きなところがあり、頼られると断れないタイプの人でした。桑原さんが義姉の不満を口にすると機嫌が悪くなり、しまいには「どうして家族仲よくできないのか」「困っている姉が心配ではないのか」「人を突き放すような、意地の悪いことをいうな」などと怒り出し、桑原さんの気持ちをわかってもらうことはできませんでした。
娘が生まれると、義姉が訪問する回数はさらに増え、しまいには母親である桑原さんを差し置いて、休日になると夫と娘と3人で出かけてしまうなど、状況はエスカレートしていきました。当時は健在だった夫の両親も、義姉をたしなめてはくれましたが、すぐに感情的になる義姉が手に負えないようで「ごめんなさいね、あの子はわがままなところがあるから…」と、結局さじを投げてしまいました。
娘が小学生になってから桑原さんが仕事に復帰すると、夫婦間のすれ違いはさらに増え、夫婦喧嘩が頻発し、とうとう夫は両親と姉のいる実家に戻ってしまいました。
桑原さんはそれまで家族で暮らしていた郊外の賃貸マンションを引き払い、ひとり娘を連れ、職場にほど近い都内の賃貸マンションへと引っ越しました。その後、50代になってすぐに自分の両親が亡くなったのをきっかけに、相続したお金で近隣のこじんまりしたマンションを購入し、住み替えています。いまは勤め先を定年退職しましたが、年金のほか、友人が経営するフラワーショップでのパート収入があり、のんびりと生活しています。娘は都内の大学を卒業後、就職して独立。来年には結婚を控えています。
夫とは娘の進学や就職などの節目に連絡を取っていましたが、義姉とは没交渉でした。かなり前に夫から、義姉は40代後半で結婚が決まり、実家を出たという話は聞いたものの、今回の一件があるまでは、連絡を取ることも、連絡をもらうこともありませんでした。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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