不仲な夫とは、離婚しないまま別居を続け、20年以上経過。ある日突然の義姉からの連絡で、夫の死を告げられました。相続財産は、夫が生活していた自宅建物と土地、あとは預貯金と保険金です。すると義姉から、もともとは自分の両親のものだった自宅を相続放棄してほしいとの申し出が…。詳しく調べてみると、自宅不動産にはある問題がありました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
不動産の名義変更を怠ると、重大なトラブルの原因に
相続が発生した場合でも、現在の法律では、土地・建物の名義変更に期限を切られることはありません。そのため、名義変更をしないまま放置している方も散見されます。しかし、不動産を亡くなった人の名義のままにしておくと、あとからさまざまなトラブルに見舞われる可能性があるため要注意です。
たとえば、相続人間で「不動産はすべて長男が引き継ぐ」という話でまとまっていたとします。その後、不動産の名義変更をせず、遺産分割協議書も作らずに放置したまま、相続人の1人である次男が亡くなったとしたら、どうなるでしょうか。次男の配偶者も相続人の立場となるため、「不動産はすべて長男が引き継ぐ」という話に反対すれば、名義変更はスムーズにはできないでしょう。
上記はよくあるケースですが、もちろん問題はそればかりではありません。名義人が亡くなっていれば、第三者はだれが相続した不動産なのか見当がつきませんし、仮にそのような不動産を担保に金融機関から融資を受けようとしても、名義が異なれば担保にすることはできず、当然融資も下りません。
早期のうちに名義変更を行わないと、時間が経過するほど相続人が増え「遺産相続争い」に発展するリスクが高まります。人の気持ちや考え方はずっと同じではなく、置かれた状況や事情が変われば容易に変化するものです。相続発生時には早急な名義変更をすることをおすすめします。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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