女性への教育提供が、既得権益のない実力派医師を輩出
もちろん年配の女性演者でも素晴らしい方はいる。麻田ヒデミ医師は、香川県丸亀市では有名な医療機関の経営者だ。女性医師が少ない時代から活躍している先達である。東日本大震災後の福島での医療支援で出会った方だ。一度は所有する病院が破産したが、その後、立て直しを図り、現在も第一線で診療を続けている。彼女は丸亀市の地域医療および福祉を積極的に展開している。
2018年7月に発生した西日本集中豪雨では、外来施設が浸水し使用不能になった倉敷市真備地区のまび記念病院に対し、自らのクリニックの総合検診車を無料で貸与したという。総合健診車は診察室のほかX線写真検査やエコー検査もできる機能を備えており、臨時診療所として使える。被災地域の方々は、馴染みのある主治医のもとで診療を受け続けることができた。
それだけではない。彼女は20年に渡り、中国の医師・医療従事者と医学交流を続けており、来日研修の受け入れや現地医療機関への健診技術の指導、移動健診車の導入、日本人医師による画像診断支援システム構築などを行ってきた。地域に密着し、患者に寄り添う彼女の信念には頭が下がる。
残念ながら、この世代の女性医師は少なすぎて、ここまでの人材は多くはない。しかし、女性医師数は、全年齢では全体の2割程度だが、年代別では40代で26.3%、30代で31.2%、20代で35.9%と増えてきている。人数が増えてくれば、潜在的能力のある人材の数も増えるはずだ。
女性は、肩書きを重視する社会に置かれなかった分、男性のような既得権益は少ない。今まで男性が与えられてきたようなリーダシップ教育と実践の機会を女性にも与え、人材の層を厚くすることに注力すれば、男女ともに実力のある人材が出てくるはずだ。そうすれば、現場から離れたベテランに頼らなくてもいい。
昭和世代の男性社会の思考のまま、審議会のメンバーを決めるようでは会議の存在意義がない。次世代の医師達のためにも、社会のためにも、現場力があって多様な背景をもつメンバーを集めたほうが、既得権益に無関係な「専門家」集団を作れるだろう。
今が過渡期…古い価値観を脱却し、次世代へどう繋ぐか
冒頭のキャンベル氏の話に戻る。「未来を描く」場に女性も入れること。これは女性への優遇措置ではない。紅一点とかヒロインとかマドンナとか、そんなお飾りは要らない。「社会という公の場にいるのが男性、家庭という私の場にいるのが女性」という線引きは、過去における古い価値観だ。社会を構成している半数は女性であり、医療界にも女性の数は増えている。
今は過渡期なのだ。男性も女性も、社会と家庭を常に行き来する時代が来ている。未来を描くなら、社会に働きかけるなら、社会の半分をしめる女性を意図的に入れていくべきだ。そしてこれは、「女性を」ではなく「優秀な人材を」を引き上げるための流れでもある。
どうやら今のところ、私の世代では、まだそこまで到達できていない。女性の教育への後押しは今後も必要だと思う。だがその目的は、会議に女性を入れることではなく、社会に多様性をひらくことであり、透明性をもたせることだ。
「未来を描く」ために、男性優位な政治や世界観に対し、あえて否定力をかけていかなければならない。いまだに昭和を引きずっている40代以上の世代から、若い世代へ、世間の価値観をどう変えて、社会をどう繋いでいくかが課題だ。
濱木 珠恵
新宿ナビタスクリニック院長
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