東京大学を卒業した杉山宗志氏は、福島県いわき市を中心に展開する「ときわ会グループ」にて、病院の事務方として働いている。いわき市は医師不足と言われる土地だ。そんななか、医師の初期臨床研修の制度がもたらしたチャンスとは…。※「医師×お金」の総特集。GGO For Doctorはコチラ

福島県内の「研修医数」は増加傾向

今回は、医師の初期臨床研修に関するお話をしたいと思います。

 

ご存知の通り、医学生は卒後、「初期臨床研修」と呼ばれる各診療科での研修に進まなければなりません。研修先は、主に「マッチング」により決まります。医師臨床研修マッチング協議会が、医学生から提出された希望順位表を基に、研修先と突き合わせるものです。また、研修先は、大きく「基幹型臨床研修病院」と「協力型臨床研修病院」、「臨床研修協力施設」に分かれます。初期臨床研修は単独の病院で研修が完結することはなく、基幹型病院に初期研修医が所属し、協力型病院や協力施設が研修の一部を担います。

 

(※写真はイメージです/PIXTA)
(※写真はイメージです/PIXTA)

 

この時期、多くの基幹型病院で「臨床研修管理委員会」が開催されています。基幹型病院に、連携している協力型病院や協力施設の担当者が集まります。筆者も勤務先が協力型病院であるため、福島県内のいくつかの臨床研修管理委員会に参加しました。9月25日に発表されたマッチングの中間結果をもとに、次年度の研修医確保の動向が共有されました。

 

福島県内には、基幹型臨床研修病院が18病院あります。その中の病院を1位希望に選んだ医学部生は103人(前年比7人増)で、18病院の定員の合計である164人に占める割合は62.8%と、前年から3.6ポイント増えました。福島県内の研修医数は、東日本大震災、原発事故の前は70~80人程度で推移しており、震災後の2012年度は56人と減少しましたが、その後は増加に転じています。

研修医は地域の心強いサポーター

いわき市内には現在、2つの基幹型病院があります。その一つ、いわき市医療センターでは、初期研修医の受け入れ定員が12名のところ、第一希望とした医学生が18名となり、昨年度より大きく伸びました。地域にとって、初期研修医が来てくれることは大きな力になります。

 

筆者の勤務先の病院でも、協力型病院として、連携しているいくつかの基幹型病院から初期研修医を受け入れています。受け入れにあたっては、基幹型病院側の事務スタッフと、細かなやりとりを行います。連携を始める手続き段階では、臨床研修制度で定められる要件を確認しながらどう連携できるかを調整し合います。

 

実際に研修医が交流する段階では、研修医の希望通りの受け入れは可能かの確認から始まり、研修医の宿泊先、移動手段、集合時間といった生活面の連絡、契約書や研修記録等の書類処理や経費処理の連絡が行われます。

 

初めのうちは手探り状態でしたが、今となっては、研修医の先輩から代々引き継がれている内容をLINEで流してくれますし、次に来る研修医と直接繋いでくれるようになったので、進めやすくなりました。

 

病院間の連絡に携わっていると、事務スタッフには、調整能力に長けた柔らかい方が多いように感じられます。基幹型病院の事務スタッフは、研修医本人の希望と、連携している病院でできる研修内容を把握しながら、2年間でこなさなければならない内容を完遂できるよう、研修をコーディネートしなければなりません。

 

筆者の病院に、「突然ですが来月から研修でお世話になれませんか…?」といった連絡が届くこともありますし、こちらから、「実は医師が退職して研修ができなくなってしまいまして…」とお話することもあります。

 

こちらから無理なお願いをすることばかりなのですが、基幹型病院のスタッフは、どの病院でも、柔軟に、即座に対応してくださいます。こういった事務スタッフが、研修医の経験の幅を担保していると思っています。

「医師不足の土地」を変えつつある「研修医との縁」

さて、先にも述べた通り、初期研修医が地域に来ることは大きな力になります。若い人材が来ることで活気付きますし、輪が拡がります。筆者の病院では今年になり、初期研修で受け入れた医師が専攻医になり再び来るということが始まりました。

 

彼は普段、他病院の総合診療科に所属しており、こちらでの勤務は半年間ですが、これまでの経験を活かし即戦力として現場で大活躍しています。一般外来と外来化学療法を並行して対応するしかない状況や、閉じなければならない外来枠があるという状況が続いていましたが、こういった対応に苦慮していた面を満遍なくカバーしてくれています。救急も積極的に受け入れてくれていますし、当直も積極的に入ってくれています。

 

「自分は将来、地域で活躍したい、いわきは馴染みのない土地だったが、規模や環境が似ていて良いトレーニングになると思った。それに、楽しい人がいた。」と話してくれています。初期研修医として来た時にできた人間関係が、こちらに来るきっかけになったようです。同期や後輩にも縁を繋いでくれており、一緒に飲みにいくなどすることは、今はなかなかできませんが、とても楽しいものです。

 

いわき市は、医師不足と言われる土地です。全国の人口10万人あたりの医師数は246.7人のところ、いわき市は167.1人です。即戦力となる医師をすぐにでも招聘したい状況ですが、活躍する医師を都合よく確保しようなど、虫のいい話です。一人前になった医師が馴染みのない土地に突然来ることなどありません。充実した研修をなんとか実現しようと環境を整える努力をし、来てくれた研修医との関係を大切にすることで将来に繋げようとしています。

 

先に述べた通り、いわき市医療センターに18名の第一希望が届いたのは嬉しい結果です。しかし、医師不足の土地で、せっかく研修を希望してくれた6名を受け入れられないというのは、この地域にとって損失です。筆者の病院でもさらに受け入れを拡大し、地域の医療に貢献できるよう模索中です。

 

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杉山 宗志
ときわ会グループ

 

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