社員の能力の見える化で生産性がアップ
ところが、編集の仕事なんて毎日本社に来てやるような仕事ではない。都心部にはコワーキング施設が増えたので、そこで仕事させていれば基本はすんでしまうはず。月数回の会議などに出席してくれればそれでよい。本社の社員も少なければ、さらにオフィス賃料を節約できる。
これは、出版業務に多少詳しくなった私には理解しやすいものでしたが、今回のコロナ禍でやってみた全国テレワークお試しキャンペーンを経て、企業は今後どういった行動をとるようになるのでしょうか。
まずテレワークをやってみた結果、多くの会社で業務が効率化したという事実があります。個々の社員のタスクが明確になり、決められた時間内に仕上げることが、「オフィスでなくてもできる」どころか、部門によってはかえって労働生産性が上がった会社が多く出たというのは、経営者側から見て驚くべきことでした。
これまでは渋谷にオフィスを構えることは、会社の先進性を語る、ブランド力を誇示する絶好の宣伝材料でした。学生の就職活動でもお洒落な街、渋谷で働くことは、多くの学生に好感されてきました。
超高層ビルのかっこいいオフィスに勤める。何千人もの社員が一堂に集まり、先輩たちは手取り足取り指導してくれる。そんな会社で自己実現。たくさんの企業ポエムが作られ、夢を抱いて入社してくる学生たち。
また企業側も多くの社員を一堂に集めて仕事させることが労働生産性を向上させると、信じてきました。オフィスは分散しているよりも集中させる。それにはみんなが集まりやすい都心がよい。渋谷であれば若者受けもよいではないか。
ところが、テレワークをやってみて多くの社員が感じたのが「通勤しなくてよい」という幸せでした。渋谷まで満員の通勤電車に乗って毎日通うことの不合理に気づいてしまったのです。感染症に限らず、満員の電車に長時間滞在するのはリスクの塊です。また、時間の大いなる無駄でもあります。
会社側から見れば、何も全員が雁首揃えて出社して来なくてもかなりの業務ができてしまうという、新たな発見がありました。それどころか、テレワークは社員の能力を的確に「見える化」することで生産性を大幅にアップさせることが、判明してしまいました。