
新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。
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日本の就職はブランド企業への「就社」だった
次に掲げた表は大学生文系理系別の就職人気企業ランキングです。バブル真っ盛りだった1989年と30年後の現在を比べてみました。
1983年に日経ビジネスが「企業30年説」を唱えて話題を呼びましたが、東京商工リサーチの調べでは2017年に倒産した企業の平均寿命は23.5歳だそうです。しかしこのデータには中小企業も含まれています。大手企業になるとその寿命はだいたい60年程度ではないかと言われています。
そこでこの表を見返してみると、なるほど学生は30年前も現在も、見事に大企業への就職を希望していることがわかります。業種こそ時代を反映して、以前は金融系、今では食品、ゲーム系などが人気ですが、商社や航空、電機、保険などは30年間ずっと鉄板の地位を誇ります。
では、こうした大企業に就職する意味合いは何でしょうか。就活にあたってはどの学生も「やりがい」だとか「成長できる」といった抽象的な発言をしますが、簡単な話、大企業なら安心・安全だからというのが大きな理由であることは昔も今も変わらないのではないかと思います。もちろん、大企業のほうが中小企業よりも年収が高いところが多いでしょうし、福利厚生だって充実しています。おまけに都心の良い場所の立派なビルに入居しているなどというのも、これまでの有力な選択理由だったと思われます。
いっぽうで、特に文系学生に特徴的だと思われるのが、では会社に入って何をやりたいのかという目的です。企画がやりたいだの、海外営業がしたいだの、いろいろ聞けばそれなりの答えが返ってきますが、大企業になるほど組織は巨大でなかなか学生の希望を叶えてくれることはありません。たとえば「君は総務で働いてもらうよ」と言われ、企画や広報志望だった学生が、「それはできません」と言って入社を断念するといったケースは日本の場合は稀です。
つまり、いちおう聞かれればなんだかんだと御託を並べますが、実際はそのブランド会社の一員に加わりたいというだけの「就社」であるのが就活の実態です。だから採用する側も自分の会社の風土と目の前にいる学生の気質が適合するのかを、重要な選考基準としているのです。