新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

大組織の崩壊で大企業信仰は終焉する

ではどうしてこの30年の間に、日本企業は世界から置いていかれたのでしょうか。それは、どうしてもこの日本の大企業に蔓延る村社会意識であるような気がしてなりません。良い学校を出た学生の多くが、今そこにある良い会社、安定した基盤がある大企業に就職するからです。同じような人種が同じような境遇で育ってきた学生を同じような価値観、つまり村の論理にそぐう人物と評価して採用する。

 

太平の世の中が続く限り、この方法にそれほど間違いはありません。しかし、ビジネスの世界は時代の変化とともに急速に変わっていきます。とりわけこの30年間は製造業のようなハード産業が急速にITを利用したサービス産業に取って代わられる30年でした。

 

そこに日本は何の手も打てなかった。起業をする若者は少なく、良い学校を出た学生はあたりまえのように大企業にしか顔を向けない。みんながひとところに集まって、寄り添い、もたれあって仕事をする。時代の変化には目をつぶり、小さくなっていく需要のパイを奪い合うような業種で生きていく。日本は今でも人口が1億人を超えるマーケットが存在するので、まだ大企業同士で萎む需要を分け合うことができていますが、今後の発展は期待できないばかりか大企業の中でもそろそろその寿命が尽きてしまうところが出てきても不思議ではありません。

 

いっぽうでこれからの時代、情報通信機器を駆使して、自らの能力、アビリティを武器に仕事をしていく人が増えていくと、必然企業組織も変わらざるをえなくなってきます。大企業の村の論理は崩れ、組織を構成する堅固な中間組織は不要のものとなる可能性があります。頑なに村の論理を守ろうとする会社は、世界の競争からさらに引き離され、国内需要が萎み続ける中で完全に行き場を見失うところも出てくると思われます。

 

大企業という村に、いらぬ忠誠心でお仕えすることの馬鹿馬鹿しさを悟った優秀な社員が、村の外に出て活躍できるようになればやっと日本にも新しい産業、エクセレントな会社が誕生するのではと期待します。そしてそのきっかけを作ったのがコロナ禍であったのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

 

 

 

 

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