新型コロナウイルスの感染拡大によって不動産の世界は激変している。景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

GAFA+Mが東証一部の時価総額を超える

そうした競争をくぐり抜けてきた、優秀であるはずの学生たちはやはり安定基盤を持った大企業への就職に憧れる。採用する側もほとんどがこうした良い子たちで占められているので必定、自分たちと同じような種類の学生を採用してしまう。やがて組織は硬直化してしまうのですが、同様な思考回路の社員ばかりになってしまうと、そもそも硬直化しているという事態そのものにまで気がつかなくなる、いわゆる大企業病と称される状態に陥ってしまうのです。

 

牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)
牧野知弘著『不動産激変 コロナが変えた日本社会』(祥伝社新書)

会社の上層部はよく、改革だ、下克上だと叫びます。とりわけ社長が交代になるとほぼすべての新社長は「わが社には今こそ改革が必要だ」と言います。「前社長の施策どおりにやります」などと言うと、何だか社長交代した意味がないのではと考えてしまうからです。しかしどんなに気張った改革でもしょせん大企業という村の中で起こることなどは、他所から見れば、おままごとに等しいレベルのものです。

 

日本企業が世界中から称賛され、世界のマーケットを席巻していた時代はとうの昔に過ぎ去りました。次ページの表は1989年と2019年における世界の大企業の時価総額ランキングです【図表4】。89年と言えば日本はバブル真っ盛り。この当時の時価総額上位30社のうち日本企業はなんと21社、7割を占めていました。NTTを筆頭に銀行、電力、自動車、鉄鋼、電機など、日本の主力産業は世界の隅々にまでその勢力を拡大していました。

 

ところが、あれから30年。2019年のランキングには日本の企業はただの1社も名を連ねていません。日本の時価総額トップはトヨタ自動車がなんとか35位になっているだけです。トヨタ自動車を例にとれば、この30年間に時価総額は542億ドルから1939億ドルに3.6倍に増やしていますが、19年トップのアップルは9409億ドル。その差は4.8倍にまで拡大しているのです。

 

現在、世界をリードするのはGAFAと呼ばれるグーグル(アルファベット)、アップル、フェイスブック、アマゾンなどのITをベースとしたサービス業です。ところが今、日本企業で彼らに肉薄できる会社は存在しません。このGAFAにマイクロソフトを加えた時価総額を見ると、20年4月現在ですでに東証一部企業の時価総額を超えています。日本企業から見れば彼らはもはや視界にも入らない遠くに走って行ってしまっているのです。日本は平成時代にどうやら相当惰眠を貪ってしまったようです。世界の急速な進歩から周回遅れになっているのは厳然たる事実と言わなければならないでしょう。

次ページ大組織の崩壊で大企業信仰は終焉する
不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

祥伝社新書

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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牧野 知弘

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不動産激変 コロナが変えた日本社会

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牧野 知弘

祥伝社新書

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