コロナ禍にもかかわず、物件が超速で売却に至ったワケ
新型コロナウイルスの影響を受け、都内に緊急事態宣言が発令されたときのことです。ある自社物件の販売を開始したところ、問い合わせが殺到し、すぐに売却が決まるということがありました。社会情勢という面では、あらゆることに対して自粛の流れがあった最中にもかかわらず、驚くほどスピーディーに売却に至りました。
そのポイントは、やはり担保評価だと考えています。本物件は、埼玉県のマンションでしたが、「積算価格」が販売価格を上回る物件だったのです。このように担保評価が高く、資産性の高い物件は、世相とは関係なく「買いたい」という人が現れることを改めて実感する取引となりました。
ただし、この場合にポイントになるのは、当然ながら〝購入時〟の資産性ではなく、〝換金を考えたとき〟の資産性です。そのため、長期的な視点で考えることが大切です。積算評価のうち、土地の評価額は、一般的に、路線価×土地面積で算出されます。路線価は相続税評価の基準として3年に1度評価の見直しがありますが、基本的には公示価や固定資産税評価の変動に応じて評価変えがあります。
一方で、建物評価は、再調達原価と耐用年数を基準としているため、築年数が経てば経つほど確実に目減りしていくものになります。
少し話が逸れますが、この、法定耐用年数という考え方について、私は、すでに破綻が見えてきているルールだと考えています。例えば鉄筋コンクリート(RC)造の物件は、構造上は100年の耐久性があるといわれていますが、「法定耐用年数上は47年で価値が0円になる」という設計になっています。
このルールでいけば、「新耐震基準を満たしていて、まだあと50年は使えるマンションの担保評価がまったく出ない」もしくは「極端に短い融資期間しか設定できない」という案件が大量発生することになります。そんな事態に陥っては、日本の経済も大きな打撃を受けるわけで、近い将来、このルールの改定が起こると考えています。
そして、このルールが変わったとき、バブル期に建てられた仕様のいいRC造マンションの価格が大きく見直されることになると考えており、投資家の方にとっては大きなチャンスになると思います。
さて、話を戻して、次は「収益性」について見ていきましょう。過去を振り返ってみれば、バブル期の不動産投資は「売却益」を得るという目的でした。つまり、この時代の収益性とは、どれだけ不動産が値上がりするのかということです。それくらい不動産価格が上昇することが当たり前と考えられていた時代でした。
これが2度のバブル崩壊を経て、今は保有している間の収益、「運用益」が重要視されるようになりました。「運用益」というと、物件購入価格に対して見込める家賃収入はいくらなのか?という、いわゆる「利回り」をイメージされる方が多いと思います。
もちろん、それも重要な指標です。しかし不動産の運用、つまり賃貸不動産経営にあたっては、保有している期間のなかで、最終的に利益がどれだけ残るのかがポイントとなるわけなので、収入面と支出面を長期的視点に立って分析することが重要です。
具体的には、「継続して賃貸需要が見込めるのか」「家賃の下落リスクはどうなのか」といった収入の安定性や、空室が出た際の原状回復、入居付けにかかる費用、長期間物件を保有するにあたっての修繕費などです。