亡母が残した相続財産は自宅、賃貸マンション、そして預貯金。シングルマザーで苦労続きの姉は、裕福な未亡人の妹に不動産を渡したくなく、激しい衝突が起こってしまいます。しかしそもそもの発端は、亡母が契約していた税理士の不用意な発言で…。解決策はあるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
亡母の財産の内訳は「自宅・賃貸マンション・預貯金」
今回の相談者は、60代の奥村さんです。奥村さんは高齢の母親を亡くし、妹と2人で相続手続きをすることになりました。母親の財産は自宅のほか、9世帯の賃貸マンション、そして預貯金です。妹と遺産分割についての意見が合わないことに困り果て、筆者の元を訪れました。
相続が発生した際、奥村さん姉妹は、母親が毎年の毎年確定申告を依頼していた税理士を頼って相談に出向きました。
税理士によると、母親の賃貸マンションには建設時のローンが残っており、合算すると基礎控除の範囲内に収まるため、相続税の申告は必要ないとのことでした。
「お母様の自宅とマンションは、売ればどちらも6000万円ぐらいでしょうか。合わせると負債を引いても、9000万円ぐらいになりそうですね」
奥村さん姉妹は、税理士がはじき出した予想外の高価格の驚き、喜びました。
●相続人関係図
依頼者 奥村さん
被相続人 母親
相続人 長女(相談者)、妹
シングルマザーで頑張ってきた相談者の「胸の内」
奥村さんから預かった資料をもとに財産評価をしてみると、自宅にもマンションにも負債があり、正味財産は両方合わせても4500万円程度。税理士が説明した数字は、相続評価からかけ離れたものであると思われ、奥村さんにもそれを伝えました。
「そうなんですね…。ですが、この相続財産をどうやって分けたらいいのでしょうか。どのように評価して分割協議をすればいいか、アドバイスいただけませんか?」
奥村さんは困惑顔で筆者に尋ねました。
筆者がさらに正確に評価を進めると、財産評価は自宅が3000万円、負債が多いマンションは1500万円と計算できました。結果をお伝えすると、奥村さんは言葉を続けました。
「私は息子が小学生のころに夫と離婚しまして、ずっとシングルマザーで子育てをしてきました。妹には子どもがいませんが、妹の夫は事業家でお金持ちだったんです。妹はずっと専業主婦ですけれど、子どもがいないぶん、生活には余裕があったはずですし、義弟が亡くなったときにも遺産がたくさん入ったはずなんです。だから、母の自宅とマンション、私が両方もらいたいんです」
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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