両親と独身の姉、そして自分の家族とにぎやかに暮らしてきた広い家。時は流れ、両親と姉は亡くなりましたが、娘の結婚が決まり、二世帯住宅の計画が持ち上がりました。娘の夢を実現すべく奔走しますが、売却予定の土地には、亡姉の名義が残っており、亡き兄の子たちと遺産分割協議が必要となりました。しかし、兄嫁と甥たちの対応は冷たく…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
結婚が決まった娘のため、二世帯住宅を建てたい
今回のご相談者は、70代の片岡さんです。片岡さんは3人きょうだいの末っ子で、長男、長女、次男という構成です。長男と片岡さんは結婚して子どもがいますが、姉は独身を通し、ずっと会社員として働いていました。片岡さんが暮らすのは両親から受け継いだ実家の跡地で、千葉県の風光明媚な場所にあります。土地は200坪近くとかなりの広さです。
長男は就職の際に実家を離れましたが、独身の長女はずっと実家から仕事に通い、片岡さんは結婚を機に実家に戻ってきました。一時期は、片岡さんの両親と姉、片岡さん夫婦と子どもふたりの大家族として、にぎやかに生活していました。
片岡さんの父親が亡くなって相続が発生した際、長男には自宅不動産の権利を放棄してもらい、片岡さんと姉の共有名義に変更しました。その後、片岡さんと姉で3階建ての家に建て替えました。2人でお金を出し合ったので、建物も2人の共有名義となっています。その状態で20年ほど経過しました。
片岡さんの長女の結婚が決まり、片岡さん一家には、二世帯住宅への建て替えの計画が持ち上がりました。3年前に片岡さんの姉が急病で亡くなったため、現在の家に暮らすのは、片岡さんの家族だけとなっています。
ただ、長女の希望にかなった二世帯住宅へと建て替えるには、資金が足りません。そのため、広い敷地の半分を売却して建築費用に充てようと考えました。地元の不動産会社に相談すると、希望の金額を上回る額で売却できる可能性があるといわれ、すっかり安心した片岡さんは、その会社に測量や分筆を依頼し、二世帯住宅のプランも作成してもらいました。
ところがこの段になり、自宅不動産に亡くなった姉の名義が残っているという問題が浮上しました。名義を書き換えないままでも普通に暮らせてきたため、名義について気にも留めていなかったのですが、このままでは売却できないので、自分以外の相続人に連絡し、土地の登記をやり直す必要に迫られました。
●相続人関係図
依頼者 :片岡さん(男性・70代)定年退職
被相続人:長女(独身、子なし、片岡さんと同居)
相続人 :次男(片岡さん)、亡長男の子2人
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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