レストラン経営を成功させた働き者の夫婦。夫に先立たれた妻ですが、店を長男に継がせ悠々自適の毎日です。あるとき、自分が「なんとなくイメージしていた」3人の子どもたちへの遺産分割の内容が、あまりにも不公平なことに気づき、愕然。対策を立てようとしますが、価値の高い不動産がかえって遺産分割のハードルを上げることに…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
都心の洒落たレストラン、経営者夫婦は「超倹約家」
今回の相談者は、70代の加藤さんです。加藤さんは長い間、亡き夫とともに飲食店を営んでいました。当初は、住宅街の小さな店舗からスタートした庶民的なレストランでしたが、味がよいと大変繁盛し、マスコミもたびたび取材に訪れる人気店に。何度か場所を変えながら、最終的には渋谷の住宅街に土地を購入するまでになり、現在では日当たりのいいテラス席を設けた、おしゃれな店となりました。相変わらずの人気店で、ドラマの撮影にも使用されることがあります。
とはいえ、加藤さん夫婦の経営は極めて堅実でした。その甲斐あって、夫と築いた資産はかなりのものです。レストランを経営している土地と建物、世田谷には瀟洒な自宅兼賃貸マンションがあります。そのほかにも、ご主人が亡くなったときの生命保険も残っているほか、長年の順調な経営で積み上がった億に近い預貯金もあります。現在は長男夫婦に店を任せていますが、経営する賃貸マンションも満室で、お金の心配がない、悠々自適の老後生活です。
加藤さんには、長女、長男、次男の3人の子どもがいます。長男は食品会社を経営しているほか、両親から引き継いだレストランも経営、独身の次男はヨーロッパの輸入品を扱う自営業、長女は長男の店で片腕として働いています。
加藤さんはもの静かな方で、ひとりの生活が楽しいといいます。そのため、子どもたちとは同居はせず、近所に暮らしている長女家族とたまに食事をともにする程度です。
●相続人関係図
被相続人 :加藤さん・70代(配偶者は故人)
相続人 :長女、長男、次男
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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