
兄は堅実なサラリーマン生活を送り、定年退職。弟は人間関係に躓いて以降、母親の収入を頼りに引きこもり生活。弟は、90代となった母親の年金と預貯金を握って離さないうえ、遺言書まで書かせており、母親自身もなすすべがない状態です。将来を心配する兄が資産状況を尋ねても、両者からはスルーされ続け…。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
自宅の土地建物の半分は、すでに弟のものになり…
今回の相談者は、会社を定年退職してリタイア生活を送る60代の永井さんです。相談内容は、高齢となった母親の相続問題と、家族関係にまつわる不安についてでした。
2021年1月22日(金)【オンライン開催(LIVE配信)】
相続実務士・曽根惠子氏登壇!
関東在住 or 関東に不動産所有の方限定
「生前の不動産対策」による相続税減額スキーム
永井さんの母親は90歳ですが、意思判断能力もしっかりしていてお元気です。現在は埼玉県にある実家で、60代半ばとなった永井さんの弟と同居しています。ただ、弟には問題があるといいます。弟は専門学校を卒業後、地元の中小企業に勤務していたのですが、40歳になったばかりの頃、新しい配属先でトラブルがあり、それが原因で人間関係がこじれて退職に追い込まれてしまいました。それ以来、結婚予定だった女性とも別れ、その後は社会に出ることなく、ずっと自室に引きこもっているのです。母親ともほとんど口をききません。
父親は15年前に他界しましたが、その際に、実家の土地・建物ともに母親2分の1、弟2分の1の持ち分で名義を書き換えています。預貯金はすべて母親が相続しました。永井さんの相続分はありません。
父親は大手企業勤めで、給料も年金もかなり高額でした。また、引きこもりとなった息子を心配していたため、生活費を倹約するなどしてかなりの預貯金も残したようです。自宅は古いものの、きちんとメンテナンスをしており、暮らすのに不安はありません。父親の遺産と母親の年金や金融資産で、ふたりは問題なく暮らしているようです。
永井さんが心配しているのは、母親の預貯金のことです。弟は父が亡くなって以降、母親名義の預貯金を半ば強引に預かっているばかりか、母親に遺言書を書かせてるというのです。
被相続人 :母親・90代(配偶者は故人)
相続人 :長男(相談者)、次男
