転勤族の長男一家はずっと地方の官舎住まい。長年にわたる両親の介護は、近居の妹2人の役割でした。相続の段になり「遺産分割は平等に」と主張する妹たちと「跡継ぎなのだから自分がもらうべき」という兄との間で衝突が発生。なんとか遺産分割協議が終了し、申告期限に間に合うも、長男と次女の間には修復不可能な溝ができてしまいました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

兄は転勤族、両親の介護・看護は近居の妹たちが担当

今回のご相談者は、60代の桑原さんです。父親が残した遺産の分割の件で相談に見えました。父親が亡くなり相続が発生しましたが、2人の妹と意見が食い違い、困っているとのことです。

 

 

桑原さんは長子長男で、跡継ぎとして親の所有地内に自宅を建てることを許してもらったほか、晩年の父親の介護にも参加したため、自分が遺産の多くをもらってしかるべきと考えていますが、妹たちは平等に分配すべきと主張している、ということでした。

 

桑原さんの父親は、閑静な住宅街に広めの土地を所有しています。土地は奥行きのある縦長の形状で、手前に桑原さんの自宅、その後ろの位置に両親の自宅、いちばん奥にアパートがあります。長男である桑原さんは公務員で転勤が多く、せっかく建てた自宅を空き家にしたまま、在職中は家族で地方の官舎に暮らしていました。そのため、両親の看護や介護は、近くに嫁いだ長女と、奥のアパートの1室に暮らす、独身でフリーデザイナーの次女が担当してきました。

 

次女がデザイン会社を退職してフリーランスとなり、父親所有のアパートに移り住んだのは、リウマチを患った母親の看病のためでした。姉妹2人が交代で看護しましたが、非常に大変だったようです。母親を看取ったあと、今度は父親が認知症を発症。再び介護生活となり、父親が亡くなるまで15年以上にも及びました。その間も姉妹で協力しつつ、献身的に尽くしてきたとのことでした。

 

長男の桑原さんは、定年後にようやく一家で自宅に戻り、その後3年ほど父親の介護を分担しました。

 

●相続人関係図

被相続人:父親(同じ敷地に次女が居住)、配偶者とは死別
相続人 :長男(相談者)、長女、次女

 

母親はリウマチを患っていた(※写真はイメージです/PIXTA)
母親は長年リウマチを患っていた(※写真はイメージです/PIXTA)
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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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