高齢となった父親は元経営者。末っ子長男は二代目社長となり、娘たちは父親の庇護のもと、広い実家で自分の配偶者や子どもたちとともに共同生活をしています。将来の相続が心配になった長女が父親に状況を尋ねると、「息子には不動産、娘たちには有価証券と現金」というプランを話してくれましたが、そこにはいずれ解決しなければならない、ある問題をはらんでいました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
父親は元会社経営者、不動産と多額の金融資産を保有
今回の相談者は、東北地方在住の青木さんです。青木さんは4人きょうだいの長女で、2人の妹さんを伴って来訪されました。相談内容は、高齢の父親に相続対策をしてもらいたいというものでした。家族構成は、父親は90歳、母親は80代半ば、60代の青木さんと次女、50代の三女と末っ子の長男です。
青木さんのきょうだいは全員結婚して家庭を築いており、それぞれ子どもがいます。父親は若いときに建築関係の会社を創業し、現在は長男が会社を継いでいます。
父親の財産は自宅の土地と建物、会社で使用している土地が3ヵ所、有価証券や預金などがあり、相続税がかかる内容です。不動産評価と金融資産は同程度です。
●相続関係者
被相続人:父(元会社経営者)
相続人 :配偶者、長女・相談者、次女、三女、長男
両親が暮らす広い自宅に、長女家族と次女家族も同居
父親の自宅は、広々とした3階建てで、両親のほか、長女家族、次女家族の3家族が同居しています。両親ともにまだ元気ではありますが、10年ぐらい前から、母親だけでは父親の世話をはじめ、家庭内のことを切り回すのが負担になってきたため、仕事を持っている長女と次女は、お互いのスケジュールを工面しながら交代で両親の面倒を看てきました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続実務士発!みんなが悩んでいる「相続問題」の実例