介護関係者や医療関係者から情報を入手する悲劇
介護の専門家、医療の専門家からのアドバイスが、実は一番厄介です。私は介護医療業界の専門家の中で、有料老人ホームに精通している人に出会ったためしがありません。世間からはよく介護業界には専門家がいるのでは?という声が聞こえてきますが、有料老人ホームの専門家はいないのが実情です。介護評論家的な人は、大学の先生などを中心に多少は存在していますが、有料老人ホーム評論家には出会ったことは無いはずです。たまに、老人ホーム入居コンサルタントやアドバイザーと称する人を見かけますが、私の受ける印象は???というところです。
たとえば、介護の専門家として介護支援専門員(ケアマネジャー)という人たちがいます。国が定めた介護実務経験を有し、さらに資格試験に合格した人しか就くことができない専門職ですが、そのケアマネジャーの中にも、私が知る限り「有料老人ホーム」と「特別養護老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」の区別がつかない人が存在します。
さらに介護現場には、介護福祉士という国家資格を取得した介護職員が多く存在していますが、やはり、有料老人ホームのことを理解している介護福祉士を探すことは、意外と難しい作業になります。どちらの資格試験においても、有料老人ホームに関する問題が出ていないということも一因でしょう。一番の原因は、ケアマネジャーも介護福祉士も、かつて介護職員として修業していた場所に有料老人ホームが少ない、ということにあります。
多くの介護職員の修業の場所は、「訪問介護」であり「通所介護」であり「特養介護」である場合がほとんどです。そもそも、有料老人ホームというカテゴリーは、それほど歴史もなく、介護業界全体で考えた場合、急成長した未熟なカテゴリーです。まだまだマイナーな存在だと考えなければなりません。
さらに、訪問介護で育った介護職員の場合、どちらかというと老人ホームのような施設系介護には否定的な人が多くいます。なぜなら、多くの訪問介護事業者は、訪問介護員に対し、利用者が施設へ入居するようなことは介護の敗北である、という趣旨の教育をしているからです。「施設に入るなんてかわいそう」「なんとか自分たちが頑張っていつまでも自宅で生活ができるようにしなければ」という視点で仕事をさせられているのです。