
いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。
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セミナーや勉強会に参加して情報を入手する悲劇
「有料老人ホームの選び方」「失敗しない有料老人ホーム選び」などの勉強会やセミナーは、町に溢れています。かく言う私も、かつては、この手のセミナーや勉強会の講師を多く引き受けていました。セミナーや勉強会に入居希望者やその家族が参加すること自体、悪いことではありません。大いに参加し、知識を増やすべきです。ここではセミナーや勉強会への参加時の心得について、話を進めていきましょう。
講師は、自分の経験から得た価値観を持っています。そして、その価値観を無意識のうちに、皆さんに押しつけているのです。話をしながら、自分が描いたストーリーに参加者を導き、最終的には、自分の考えに同意させてセミナーや勉強会が終わります。つまり講師は、自分の考え方や見方が正しいということを参加者全員に押しつけるのが仕事、というわけです。

皆さんは、有料老人ホームのことは素人なので何もわからない、というスタンスで講師の話を聞くと思いますが、次のようなことを考えて講師の話を聞くようにしてください。
「たしかに有料老人ホームのことは、自分は素人だからわからない。しかし、介護とは、人が生きていくことを支えるだけの仕事だ。今でこそ核家族化が進み、専門家に委託している部分が多いが、少し前までは家族の中で解決してきたこと。けっして専門知識が無いからといって、わからないということではない。今まで自分が生きてきたその経験や体験からでも、十分に介護のことを考えることができるはず。この講師の話を聞いて、自分の考えを整理し、何をしなければならないのかを冷静に考えてみよう」
セミナー講師の話を聞き、自分の考え方と照らし合わせて、最終的には自分の考え方を確立すること。この一連の作業ができれば、セミナーや勉強会は効果的なものになります。
多くのセミナーや勉強会の場合、老人ホームの制度の説明に多くの時間が割かれています。しかし、本書を読み進めている読者の方はすでにお気づきだと思いますが、制度を細かく理解していても、入居実務にはほとんど役には立ちません。それなのに、多くのセミナーや勉強会で、制度の説明に多くの時間を割くのは、聞き手にとって、なんとなく有料老人ホームのことを理解したつもりになれることと、勉強不足のセミナー講師らにとっては、制度の説明はきわめて楽な話だからにほかなりません。
有料老人ホームで生活をしていくためには、(1)どのような姿勢でホーム生活を送るのか、(2)予期せぬ事態になった場合、どう決断をするのか、そして(3)日常の生活を維持するには、どのくらいの費用がかかるのか。この3つの視点で自身や家族の生き方を考えていくことを忘れないでください。