いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

行政など公の機関から情報を入手する悲劇

多くの読者の皆さんは、行政などから発信される情報は正しいに違いない、と考えていると思います。私も、行政など公的な機関、組織から発信される情報は正しいと考えています。しかし、私はまた、公的機関から発信される情報は「現実的ではない」「実務には役に立たない」「新鮮味が無い」とも考えています。

 

小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)
小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)

理由は明白です。公的機関が発信する情報は、常に正しく、根拠がある情報でなければなりません。そのためには、有料老人ホーム側から一連の申請行為などを通して自己申告のあった事実や、自身で現場に出向いて入手した事実でなければ、発信することはできません。「なんとなくAホームはおかしい」などとは、絶対に言えない立場なのです。

 

したがって、行政から発信される多くの情報は、われわれ専門家が入手している情報と比べると、かなり古い情報にならざるをえないのです。さらに、これも当然ですが、公的機関が発信する情報には、個人的な見解や好き嫌いは一切入っていません。

 

有料老人ホームのことを知らない方からすると、一番欲しい情報とは、老人ホームをどのように見れば、ホームの良し悪しがわかるのか、というものです。そのためには、「最近のBホームは、経費削減で介護職員の数が減ったので外出レクリエーションが無くなった」とか「Cホームは理学療法士が常駐しているのでリハビリの評判が高い」といった話を聞くことが重要です。当然、介護職員が少ないホームはアクティビティも消極的になり、理学療法士が常駐しているホームはリハビリも充実している、ということになります。そこで働いている職員の数や質で、ホームのサービスの質もある程度決まっていくのだということを、理解しなければなりません。そして、自身の事情を解決するためには、どこのホームが一番向いているのかを理解することが、重要なのです。

 

客観的で間違っていない情報は、論文作成には役に立つと思いますが、老人ホームに入居を考えている高齢者やその家族にとっては、役に立たない場合が多いのです。老人ホームのことを理解しようとする場合は、必ずしも客観的な情報が役に立つのではない、ということを知ってほしいと思います。

 

最近、有料老人ホーム関連の雑誌やテレビ番組が増えています。それだけ、興味のある方々が増えてきている証拠です。大前提として理解しておかなければならないことは、雑誌は売れなければならないし、テレビは視聴率がすべてだということです。したがって、売れるように編集したり、視聴率が取れるように構成を考えます。特に雑誌やテレビは、短期決戦なのでインパクトが肝心です。多少間違っていても、そう解釈することもできるという判断で、誇張して表現することも少なくありません。

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