なぜ有料老人ホームランキングは役立たないのか
正しい情報がまったく取れていないということが入居ミスマッチの大きな原因の一つだと、私は理解しています。一時期多くの雑誌で有料老人ホームランキングなるものが流行りました。
私は、ホームランキングには、否定的な立場をとっています。ホームランキングに対し否定的な立場をとっている専門家の多くは、現場経験者でもあります。多くのホームランキングは、いわばホームスペックのランキングです。自動車にたとえるなら、排気量とか馬力とか最高速度などの比較です。
しかし、有料老人ホームが入居者の生活に影響力を与えている大部分は、ホーム長や介護職員といった人間の「質」のはずです。この人間の質を論じない限り、ホームランキングは無意味だということに、気がつかなければなりません。
私をはじめとするホームランキング無意味論者は、この事実を理解しています。だから「意味が無い」と言っているのです。老人ホームのことを自動車にたとえるなら、自家用車ではなく、バスやタクシーといった乗り合い自動車のイメージではないでしょうか。そして、この場合、どのようなバスやタクシーに乗りたいかというと、スペックのよいバスやタクシーではなく、当然安全に運転してくれる腕のいい運転手が運転するものでしょう。つまり、自動車自身のことよりも、それを運転する運転手の「腕」のほうが重要だということです。
入居を検討している高齢者やその家族にとって、一番重要な選択肢は「料金」と「立地」です。当然、これに関する判断は、必ずしも介護の専門知識を必要とはしません。
次に重要な選択肢は、いったい何でしょうか?多くの老人ホーム選びの初心者の場合、部屋の広さや食事の内容、付帯設備、提供されるサービスメニューなどに目がいきます。誰しも同じですが、部屋は狭いよりも広いほうがいいし、食事は厨房で資格のある調理人が作ってくれるほうが美味しいに決まっている。エアコンや洗面所、トイレが部屋にあるかどうかも、ないよりはあったほうがいいに決まっています。エレベーターだって、2階以上に部屋がある場合は、あったほうがいいはずです。