老人ホームの食事改善…「ワタミの介護」が果たした役割

いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

ホームの食事はワタミの介護進出により向上

有料老人ホーム業界の食事に影響を与えた、「ワタミの介護」について触れておきたいと思います。

 

「ワタミの介護は有料老人ホームの食事の品質向上に貢献したホームである」。これが私の評価です。それまでの老人ホームの食事は、おおむね酷いものでした。私の勤務していた有料老人ホームでも、入居者やその家族から食事に対するクレームが来ない日はありませんでした。そのくらい、お粗末だったと自覚しています。

 

ワタミの介護が参入したことで食事の質が飛躍的に上がったという。(※写真はイメージです/PIXTA)
ワタミの介護が参入したことで食事の質が飛躍的に上がったという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

リスク管理という立場から「刺身は出さない」「餅も出さない」は当たり前でした。大勢で同時に食事をしなければならない事情から「麺類は出さない」も、当然でした。同じものを同じ企画で大量に提供しなければならないために冷凍食品を多用し、水分が飛んでパサパサだったり、逆にぐじゃぐじゃだったりと、品質が一定していませんでした。

 

「お願いだから、まともな食事を出してほしい」と、真剣に懇願されたこともありました。しかし、当時多くの有料老人ホームでは、すべて「仕方がないこと」だという認識でした。給食事業者に改善を申し入れても「対応します」というだけで、実際には何も改善しませんでした。心ある介護職員らは、自分たちではどうにもすることができない食事環境を少しでも改善したいと考え、「外食レク」を計画し、介護職員同士をやり繰りして入居者をホーム外の食事に連れ出すという奇策で対応していたものです。

 

その中で、ワタミの介護が本業の外食事業者の立場で参入したことで、飛躍的に食事の質が上がりました。食事の質が上がると、それにひきずられるように食事環境の質も上がります。それまで、プラスチック製だった器が陶器製に代わり、暖色系が多かった器が黒色系で高級感があるものに代わり、トレーの代わりにマットと箸置きがつくようになりました。有機野菜、無農薬野菜、黒毛和牛、天然マグロなど、今では普通になっている食事も、ワタミの介護の出現によるものだと、私は思っています。

株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

(株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。老人ホームの現状と課題を知り尽くし、数多くの講演を通じて、施設の真の姿を伝え続けている。

著者紹介

連載実は知らない老人ホームの真実

誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧