元農家で土地持ちの父親が亡くなり、残されたのは駅近の広い駐車場複数と2軒の自宅、そして数千万円の預貯金。質素倹約の結果、積み上がった多額の現金への相続税課税を恐れ、別口座への振り分け、タンス預金とするも、一体どこまで通用するのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
駐車場経営の元農家、高齢の父が亡くなり相続発生
今回の相談者は、50代会社員の三田さんです。父親が亡くなり、遺産分割と納税の相談で筆者の元を訪れました。三田さんの父親はもともと農家ですが、所有する自宅や農地がすべて区画整理地のなかに入り、宅地となってからは農業が続けられなくなったため、貸し駐車場にして生計を立ててきました。駐車場は全部で4ヵ所、合わせて80台程になります。月末の集金は三田さんの担当です。
もともとの自宅は、駅から徒歩4分程度のところにありました。しかし、裏側が山になっていることや、道路が狭いことから、10年ほど前に現在の場所に住み替えています。別の場所に所有する100坪ほどの土地が売れ、まとまったお金があったため、元の自宅は保有したまま、新しい自宅を別の場所に建て替えました。新しい自宅は、さらに駅近の利便性の高い場所です。
とはいえ、本来三田家は質素で堅実な家系であり、土地を売ったお金は入りましたが、父親が建てた家はこぢんまりとした木造平屋です。毎日の生活もほとんど贅沢はせず、生活費も決して多くありません。
●相続関係者
被相続人:父(不動産賃貸業)
相続人 :3人(配偶者、長男・相談者、長女)
高額な預貯金の相続税が心配、別の口座へ移し替えて…
父親は土地売却の代金や毎月の賃貸収入があったため、まとまった預金がありました。近隣の人から相続の話を聞くたびに、「相続になると相続税が大変だ」という話ばかりで、父親は常日頃から「どうしたものか」と頭を悩ませていたといいます。三田さんと一緒に本を読んだり、相続に関するセミナーに参加したりして知識を増やし、できる範囲で相続の対策をしてきたそうです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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