親の面倒を看ることを条件に、自宅3階部分を長男夫婦名義とした実家ですが、妻の母親が倒れたことがきっかけで別居することに…。ところが、次女が60代で離婚。母の面倒を看るために同居し、いずれは実家がほしいとの申し出に、長女は無関心も、妻の事情で家を出ている長男は納得できません。きょうだい3人で不満なく財産を分割するにはどんな方法があるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「母の面倒を看る」を条件に名義を一部もらった実家
今回の相談者は、60代会社員の平井さんです。平井さんの実家は住宅街にある3階建ての戸建てで、新築時は、1階は駐車場、2階は両親の自宅、3階は長男である平井さん夫婦の自宅となっていました。名義は、土地と建物の2階は両親、3階は平井さんです。
両親は、平井さんが長男であることから、3階部分を平井さん夫婦名義で登記することを許してくれました。ただし、平井さんが老後の面倒を看ることが条件となっています。
ところがしばらくのち、妻の母親が要介護状態になってしまいました。平井さんは夫婦で妻の実家に夫婦で移り住み、面倒を看ることになりました。平井さんの父親はすでに他界していたため、母親は実家でひとり暮らしすることになります。
母親は「面倒見るといったのに…」と、息子が家を出ていくことを悲しんだそうです。そのことを気にかけ、平井さんは、頻繁に実家へと顔を出し、介護サービスの制度を調べる、相続の知識も蓄えるなど、母親に尽くしています。しかし、母親や次女は、平井さんが実家を出ていったことに関して「約束を破った」と感じていたようです。長子の長女はクールなタイプで、われ関せずといった態度です。
●相続人関係図
被相続人 :母親・80代後半、配偶者は25年前に死亡
推定相続人:長女60代、長男(相談者)60代、次女60代
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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