元農家で土地持ちの父親が亡くなり、残されたのは駅近の広い駐車場複数と2軒の自宅、そして数千万円の預貯金。質素倹約の結果、積み上がった多額の現金への相続税課税を恐れ、別口座への振り分け、タンス預金とするも、一体どこまで通用するのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
納税延納の担保は「母親の土地」を活用
配偶者の特例で母親の納税は無税ですが、三田さんと妹さんは相続税の納税が必要です。空き地が多いので売却の選択肢もありますが、どこも駅から近いので保有された方がいいと判断しました。
そこでいちばん利用しにくい土地を洗い出すと、以前暮らしていた自宅が該当したため、その土地は母親が相続し、延納の担保提供としてもらいました。現在の駐車場収入で延納返済ができなくはありませんが、金銭的な余裕が少なくなるため、次の予定としては、母親の相続対策として土地有効利用をしてもらい、節税しながらキャッシュフローも余裕を持たせていくことにしました。
三田さんは筆者の説明をしっかりと理解してくださり、限られた時間のなか、手続きは速やかに進みました。コミュニケーションはとてもスムーズでしたが、非常に慎重なお人柄であり、石橋をたたいても渡らないとこともあるようにお見受けしました。しかし、だからこそ父親が大切に守ってきた土地や資産をしっかり守り抜くことができたのだと思います。
これからは、受け継いた資産をかつようしながら、お母様とともにゆとりある人生を送っていただけたらと願っています。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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