親の面倒を看ることを条件に、自宅3階部分を長男夫婦名義とした実家ですが、妻の母親が倒れたことがきっかけで別居することに…。ところが、次女が60代で離婚。母の面倒を看るために同居し、いずれは実家がほしいとの申し出に、長女は無関心も、妻の事情で家を出ている長男は納得できません。きょうだい3人で不満なく財産を分割するにはどんな方法があるのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
60代で離婚した次女が「出戻り」、実家がほしいと…
そんなある日、次女が離婚することになりました。次女は長年会社勤めをしていて年金もあるほか、離婚時の財産分与で高額な金銭も受け取り、都内には自分名義の自宅も所有しています。つまり、生活の心配はまったくありません。
しかし、60代になってからの離婚は寂しかったのでしょう。高齢の母親の面倒見ながら実家で暮らしたい、といいはじめました。自分が育った家に愛着があるのか、次女は、「母が他界したら、実家は自分がもらう」と主張しはじめました。この一連の騒ぎに対し、以前から実家のことノータッチの長女は、いつも通り無関心です。
平井さんは、母の面倒を看てくれるのはいいけれども、以下のような不満と懸念を持ち、次女に主張しています。
●母が他界したあとも次女が相続で2階を取得し、住み続けるのは法定相続分を無視している
●自分が長男なので、土地と家を相続し、共有名義を避けたほうがよい
平井さんの考えは次女の考えと大きく食い違い、関係も険悪になってしまいました。そのため、何らかの解決方法はないかと考え、筆者のところに相談に見えました。
長男名義の3階部分は、今回の相続とは無関係
筆者が調べたところ、平井さんの実家の資産は、土地が2,800万円、建物が7,000万円で、計9,800万円(母親名義の預貯金約1,000万円は除く)でした。基礎控除は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」であり、相続税額は、「9,800万円-4,800万円=5,000万円」となっています。
上記の条件から、実家の相続に関して以下のケースを考えてみました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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