深夜こっそり遺体を搬出…なぜ入居者の死はタブーだったのか

いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

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医療と介護の違いを考える

医療の目的は何か?それは病気やけがを治すことです。それでは、介護の目的は何なのでしょうか?私は、高齢者介護の目的は、死に向かって生きている人に対し元気を与え、前向きに死なせてあげることだと考えています。「前向きに死なせる」なんて不謹慎なことと思う読者の方もいるでしょうが、死について考えるということは、実は「生きることについて考える」ということなのです。

 

私も、年齢的に人生の折り返し地点を過ぎています。毎日ではありませんが、寝る前などに「自分が死ぬ時には、いったいどんな思い、どんな心持ちでいるのだろうか」と考える時があります。そして、必ず心に誓います。残された自分の時間をけっしてムダには使いたくない。自分には、それほど時間は残されていない。時間を大切にしなければ、もちろん、人は愚かなもので、目を覚まして新しい一日が始まると、そんなことは忘れて、だらだらとした時間を過ごしてしまい、自己嫌悪に陥っています。だから、老人ホームの介護職員は入居者の死に対し真剣に思いを巡らせ、考える必要があります。そして、その思いを率直に入居者と共有することが重要だと、考えています。

 

かつては老人ホームの入居者の死は隠していたという。(※写真はイメージです/PIXTA)
かつては老人ホームでは入居者の死は隠していたという。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

冗談みたいな本当の話です。私が老人ホームで介護職員として働きはじめた頃です。

 

毎月のように入居者が亡くなります。当時は、今のような「看取り」という概念も一般化されていないので、ほとんどの入居者は病院で亡くなることが当たり前でした。しかし、ほぼ人生の余力のすべてを使いきって生きている高齢者には予期せぬことも起き、気がついたらベッドの上で亡くなっていたというケースもあります。

 

老人ホームで入居者が亡くなった場合、介護職員はどのような行動をとることが普通なのでしょうか。まず、居室に鍵を掛け、誰も入室することができないようにします。そして夜を待って、介護職員総出で裏口からご遺体を搬出し、待機している葬儀屋の車で葬儀会場に運びます。ポイントは、入居者の誰にもこの事実を気づかれないようにしなければならないということです。深夜、入居者が寝静まった頃を見計い、そーっと搬出すること。

 

そして、次の日からは、何もなかったかのように立ち振る舞うこと。万一、「今日は、~~さんを見かけないけどどうしたの?」と他の入居者から聞かれた場合は、「具合が悪いので病院に入院しています。~~さんも気をつけてね」と回答することになっていました。

株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

(株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。老人ホームの現状と課題を知り尽くし、数多くの講演を通じて、施設の真の姿を伝え続けている。

著者紹介

連載実は知らない老人ホームの真実

誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

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