新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

米国投資家は東京と大阪の違いを知らなかった

今でも忘れることができないエピソードがあります。私がREITの運用会社社長の時、IRで訪れたアメリカ人投資家に大阪で買った商業施設の説明をした時の反応です。物件に対する私の説明を途中で遮った彼は、たったひとこと。

 

「で、利回りは?」

 

利回りを説明しながら、

 

「でも大阪なのでもう少し利回りをとりたいところですが、これから内部成長(賃料アップ)させていきますんで」

 

と苦しい言い訳をする私に、

 

「別にいいではないか。これだけ利回りがあれば、ふん」

 

と答えたのでした。

 

実は彼は、東京と大阪の違いすらよくわかってはいなかったのです。私から見れば、大阪の商業施設は東京よりキャップレート(還元利回り)はもう少し高く(リスクを低く)買うべきだと思っていたので必死に言い訳を試みたわけでしたが、彼にとってはそれこそ利回りという数字だけがすべてであり、「オオサカ」とか「トウキョウ」なんて地名はどうでもよかったのです。

 

牧野 知弘
オラガ総研 代表取締役

不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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