新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

住民減少、高齢化、空き家化の「鳩山ニュータウン」

都心居住への流れは、都心の不動産を見事に活性化させることに成功しました。東京中央区の月島や晴海、江東区の東雲や港区の台場に続々建ち上がるタワマンにデベロッパー各社は活路を見出し、不動産価格は高騰していきました。

 

都心に人が戻るということは、都心にあった商業施設の活性化にもつながりました。休日のデパートに人が戻り、新たな需要を見越した物販や飲食店がオープンするなど、「働く人だけ」の街だった東京都心の彩りが大きく変わったのです。郊外住宅の憂鬱都心居住の流れは、これまで都心に通うサラリーマンの牙城であった郊外住宅の価値を著しく損なうものとなりました。

 

住民減少、高齢化、空き家化の三重苦の「鳩山ニュータウン」。(※写真はイメージです/PIXTA)
住民減少、高齢化、空き家化の三重苦の「鳩山ニュータウン」。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

埼玉県比企郡鳩山町。東武東上線「高坂」駅からバスで10分ほどのところに1970年代から90年代にかけて開発、分譲された「鳩山ニュータウン」があります。この街は新日本都市開発(2003年8月に特別清算)が開発した埼玉県を代表するニュータウンです。

 

「高坂」駅から「池袋」駅までは急行で52分。大手町などの都心に出るにはバスや乗り換え時間も含めればドアツゥドアで約1時間半の距離です。

 

鳩山ニュータウンが売り出されたのは、日本経済が急成長を遂げた時代。90年代に売り出されたニュータウン内の松韻坂地区は戸当たり1億円を超える分譲価格が付いたことでも、当時大変な話題になりました。

 

そんな鳩山ニュータウンは、現在どんな状態になっているのでしょうか。鳩山町の人口統計を見るとニュータウンを構成する「松ヶ丘」「楓ヶ丘」「鳩ヶ丘」の3地区の人口は、2000年には9979人であったものが2017年12月では7256人、17年間でなんとその数は27%も減少しています。

 

さらに今後は減少の一途をたどり、2040年には人口は5100人にまで減少する見込みになっています。問題は人口だけでなく、激しく進行する高齢化です。2015年で総人口に占める65歳以上の高齢者の割合はすでに44.1%にも達しています。この数値は全国平均の27.3%を大幅に上回っており、2040年には53.9%となんと住民二人に一人以上が高齢者になることが予測されているのです。

 

現在は空き家こそ、ニュータウンが属する鳩山町全体ではまだ8.9%(2013年住宅・土地統計調査)と県全体の空き家率 10.9%を下回っていますが、今後人口の多くを占める高齢者が一斉に亡くなると、多くの住宅が空き家になることが予測されるため、この街が将来にわたって存続できるのか危ぶまれます。

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