新型コロナウイルスの感染拡大によって景気後退が叫ばれ、先行き不透明感が増すなか、日本経済はどうなるか、不動産はどう動くのかに注目が集まっている。本連載は、多くの現場に立ち会ってきた「不動産のプロ」である牧野知弘氏の著書『業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊』(祥伝社新書)より一部を抜粋し、不動産の現状と近未来を明らかにする。

親から相続した使い道のない「負動産」のゆくえ

親から相続した使い道のない「負動産」。不動産がやっかいなのは、建物はいざ知らず、土地は世の中から「消えてなくならない」ということです。どんなに高い車でも、嫌になったならスクラップしてこの世から消し去ることができます。建物ならば解体してしまえば、建物という存在自体はなくなりますが、土地はどんなに引っ搔いたところで消えないのです。

 

つまり土地は永遠なのです、永遠だから価値があるという見方もできますが、永遠であるがゆえに、売却できなければ永遠に自分の手元から離れていかないということにもなります。

 

相続した使い道のない「負動産」の税金の滞納が始まる。
相続した使い道のない「負動産」の税金の滞納が始まる。

 

不動産は所有している限りにおいて税金を求められます。住宅を建てて住んでいれば一定の減額措置がありますが、そうでなければ市区町村が査定した固定資産税評価額に基づいて税金が課せられます。その不動産を使っていようが使っていまいが、「所有している」というその行為に対して、税金はかかってくるのです。

 

家が財産だったころは家族がみんな平和に生活し、その「住む」という効用を得るために、税金は支払っても十分意味のあるものでした。子供は地域の学校に通う。電気水道ガスの社会インフラを整え、道路を整備し、警察や消防が街の安全を守る。税金は生活していく上で必要なお金であったのです。

 

ところが自分たちは使わない、だからといって他人にも「貸せない」「売れない」状態で税金だけはしっかり請求されるとは、不動産がまるで悪魔のような存在になりかわってしまうのが、相続後の世界です。

 

まるで価値のないものに対して、人々は関心を払わなくなります。米国ではリーマン・ショック発生時、痛手を被った多くの富裕層が最初に滞納を始めたのが、ヨットやクルーザーの係留費用だったそうです。まずは不要不急の対象から、人々は関心を失っていくのです。

 

親から相続していく家は今後、代替わりしていくにしたがって誰も関心を払わなくなり、やがて税金の滞納が始まっていくことが予想されます。

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不動産で知る日本のこれから

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牧野 知弘

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業界だけが知っている「家・土地」バブル崩壊

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