
夫唱婦随で地道な商売を続け、気づけば積み上がった資産は億単位…。しかし、夫が急逝したことで、妻は相続の問題に直面します。降りかかる高額な相続税と、夫が気にかけ、そばに置いていた独身の妹への対処に、妻は困り果ててしまいます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
洋品店を経営する夫婦…店と自宅と駅近駐車場を所有
今回の相談者は、60代のT村さんです。T村さんは40年近く、夫婦で洋品店を経営してきました。なんの伝手も元手もないところから商売をスタートし、それこそ朝早くから夜中まで働き詰めだったそうです。
2021年1月22日(金)【オンライン開催(LIVE配信)】
相続実務士・曽根惠子氏登壇!
関東在住 or 関東に不動産所有の方限定
「生前の不動産対策」による相続税減額スキーム
当初は流行の衣類や小物類を中心に置いていましたが、近隣に大型スーパーや衣料品店ができたころから経営方針を変更し、年代が高め、サイズが大きめの婦人服を中心に扱うようにしたところ、固定客がついて経営が安定しました。
T村さんの夫の楽しみは、株や不動産の購入でした。お金に余裕ができると少しずつ株を買い、まとまった金額になると、不動産の購入費用の足しにしていたのです。夫が所有するのは商売をしている駅前の店と、家族で生活する自宅、そして駅近の駐車場です。
60歳も過ぎ、これからは夫婦で年金をもらいつつ、商売もペースを落としてのんびりとやっていこうと話していた矢先、T村さんの夫は体調を崩してしまいました。念のための検査ということで近くの国立病院へ行ったところ、深刻な病気が発見され、そのまま緊急入院。結局、退院することもできないまま、数週間後に亡くなってしまったのです。
本人も家族も、念のための検査のつもりだっただけに、思いもよらない結果に慌てふためき、心の準備も覚悟もないまま葬儀を終えました。
T村さんは、夫の死があまりにあっけなく、しばらくは呆然自失となってしまいましたが、相続の手続きをしなくてはいけないと思い立ち、筆者のところへ相談に来られたのでした。
被相続人:夫(洋品店経営)
相続人 :2人 妻(洋品店経営)、長女(既婚)
