夫唱婦随で地道な商売を続け、気づけば積み上がった資産は億単位…。しかし、夫が急逝したことで、妻は相続の問題に直面します。降りかかる高額な相続税と、夫が気にかけ、そばに置いていた独身の妹への対処に、妻は困り果ててしまいます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

相続の方法は極めてシンプル、もめる要素はナシ

筆者が財産の評価額を出してみると、商店街にある店や自宅の評価は高く、合計で1億3000万円程度になり、相続税がかかると予想されました。相続人は母と娘1人ですから、基礎控除は7000万円。どう分けても配偶者は無税ですが、子どもには相続税がかかります。

 

 

そこで、今回は節税を優先し、配偶者であるT村さんが全財産を相続して、子どもの相続財産をなしとしました。次の相続が発生しても、相続人は娘1人だけですから、もめる要素はありません。これで今回の相続税をゼロとすることができました。

 

また、T村さんのお店は商店街の中心にあり、最寄り駅から徒歩5分程度です。自宅はお店から徒歩3分程度で、県道を渡ったすぐ先にあります。しかし、県道から自宅に入っていく道路は幅員3m程度で、車1台が通るのがやっとです。その先はさらに幅員が狭くなるため、車が誤って侵入しないよう柵がしてあります。

 

T村さんの自宅は柵を入った2軒目ですが、道路の幅員は2.7m程度で車は入れません。そのまま直進すると道はまた公道につながっているのですが、その区間はずっと車が入れない狭い道となっています。

 

このような土地が建築確認を取る場合、道路の中心より2mが必要とされ、不足があれば宅地部分をセットバックして道路とすることが条件となります。T村さんの場合、現在の敷地のうち65cm分を道路としなければ建て直しができないため、該当部分を道路とみなし、評価を下げることができました。

親族思いの夫が残した、「独身の妹」という唯一の火種

T村さんの夫の財産の中でひとつだけ問題がありました。それは、自宅の土地の名義です。自宅の土地は夫が自分のお金で購入したものですが、親孝行な夫は半分を夫の父親名義にしていました。夫の父親が亡くなったときも、家族思いの夫は、父親から妹名義に変更していたのです。夫の妹は独身で、T村さん夫婦の洋品店を手伝っており、店の二階を住まいにしています。

 

義妹とは関係もよく、トラブルはありませんが、名義をそのままにしておくと、万一義妹が亡くなった場合、権利が義妹のきょうだいに移ります。義妹のきょうだいは、亡くなったT村さんの夫のほか、姉がひとりです。夫の代襲相続人はT村さんの娘ですが、姉はまだ生存しており、権利があると問題になりかねません。

 

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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