高齢者介護とは「お金の話」である
介護という言葉と「お金」という言葉は、関連性が無いのでは?そう考える方も多くいるでしょう。介護というと、どうしても身体介護や生活支援などの介護実務が頭をよぎり、排泄などのオムツ交換や入浴をイメージしがちです。しかし、長年高齢者介護に携わってきた私に言わせれば、「高齢者介護とは、お金の話である」ということになります。
十分なお金や資産をお持ちの皆さんは、将来の介護のことは何も心配をする必要はありません。なぜなら、介護に関するたいていの問題は、お金で解決することができるからです。
問題なのは、「お金」や「資産」が無い場合です。私もお金はおろかめぼしい資産は無いので、自身の介護問題については深刻に考えています。そんな私にできることは「要介護状態にならないように健康管理に注意すること」と「要介護状態になる前に癌になって死ぬこと」だと思っています。介護業界に長年身を置き、自分の将来の介護のことを考えた場合、お金が無いと解決策がないという現実は殺伐とした感がありますが、これが現実なのです。読者の皆さんには、ぜひ早めに手を打って事態を回避していただきたいと考えています。
したがって、本稿では、介護とお金の話を中心にして話を進めていきましょう。
介護サービスの中で一番コストのかかるものは何でしょうか。
ご承知のとおり、人件費です。ちなみに、多くの介護保険サービスでは、「人員配置」という、人に対する縛りが存在します。これは法で定められたものです。ちなみに、介護付き有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)の場合の人員配置数は、3対1と決まっています。3対1とは、直接的に入居者の介護業務に従事している介護職員と看護職員は、入居者3人に対し1人の割合で配置をしなければならない、という規定です。平たく言うと、入居定員50人の介護付き有料老人ホームの場合、介護職員、看護職員の配置人数は17人が最低必要であるということになります。
誤解のないように詳細を説明しておきます。人員配置数は常勤換算数なので、会社の規定によりフルタイムで働く職員の月間労働時間が「1」となるため、パートタイマーなどで非常勤職員の場合は、2人で「1」、3人で「1」という計算になります。職員の頭数で考えた場合、50人定員の介護付き有料老人ホームの場合の介護職員、看護職員の総数は、おおむね30人程度になるケースが多いと思います。