1泊旅行をする老人ホーム…なぜ優秀な職員がいると分かるか

いい老人ホームだと近所で評判だったのに、入居したら酷い目に遭った――。老人ホーム選びでは口コミがまるで頼りにならないのはなぜか。それは、そのホームに合うか合わないかは人によって全く違うから。複数の施設で介護の仕事をし、現在は日本最大級の老人ホーム紹介センター「みんかい」を運営する著者は、老人ホームのすべてを知る第一人者。その著者が、実は知らない老人ホームの真実を明らかにします。本連載は小嶋勝利著『誰も書かなかった老人ホーム』(祥伝社新書)の抜粋原稿です。

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入居者満足度を高めるための取り組みとは

多くの老人ホームの使命の一つに、入居者満足度を高める取り組みがあります。その取り組みの中で、一番オーソドックスなものが「旅行」ではないでしょうか。

 

結論から申し上げます。老人ホームの「旅行」は多額の費用がかかります。1泊2日のバスを使った小旅行で一人当たり十数万円は楽にかかります。しかもこの金額は原価です。旅行代理店などを通せばこの数倍の金額がかかるでしょう。

 

老人ホームの「旅行」は多額の費用がかかる。(※写真はイメージです/PIXTA)
老人ホームの「旅行」は多額の費用がかかる。(※写真はイメージです/PIXTA)

 

われわれ健常者にとっては、大したことではない小旅行も、介護が必要な高齢者にとっては本当に高価なものになるのです。かつて私が働いていた老人ホームの入居者の方から「若いうちにどんどん旅行に行っておきなさい。私のようになったら旅行なんてそう簡単に行かれなくなるのだから」と言われたことが思い出されます。

 

老人ホームで旅行を行なう場合は、まず旅行を企画するところから始めます。あらかじめ参加者の抽出をしておくのですが、参加者の状態を考慮して目的地と日程を決定します。ちなみに、日程は1泊2日になります。その理由は後で記します。

 

目的地は、首都圏の場合は箱根や熱海といった有名観光地がオーソドックスなところです。日程、場所が決まれば、次にやることは下見です。日程に合わせ数名の介護職員がチームを編成し、行程を細かくつめていきます。

 

一番重要な課題はトイレの確保です。車いすの入居者も多く、さらにオムツ交換が必要な入居者もいるので、それに適した設備が完備されている休憩場所を探さなければなりません。さらに、宿泊先のホテルの選定も重要です。通常は小規模のホテルや旅館の一部を貸し切りで利用するのですが、ホテル側の理解を得ることができずに、宿泊先の選定にとても苦労をしたことを思い出します。

 

さらに、旅行の楽しみの一つ、入浴と食事についての打ち合わせを行ないます。入浴については、どのようなフォーメーションでしてもらうのかなど、細かく検討します。万一の時に備えてどう対応するのかも考えなくてはなりません。ちなみに、入浴時の万一の時とは、何も入居者が溺れるということではありません。温泉内で便を漏らした場合の対応策のことを言います。介護職員であれば当たり前によくある話です。

株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役

(株)ASFON TRUST NETWORK常務取締役。1965年神奈川県生まれ。日本大学卒業後、不動産開発会社勤務を経て日本シルバーサービスに入社。介護付き有料老人ホーム「桜湯園」で介護職、施設長、施設開発企画業務に従事する。2006年に退職後、同社の元社員らと有料老人ホームのコンサルティング会社ASFONを設立。2010年、有料老人ホーム等の紹介センター大手「みんかい」をグループ化し、入居者ニーズに合った老人ホームの紹介に加えて、首都圏を中心に複数のホームで運営コンサルティングを行っている。老人ホームの現状と課題を知り尽くし、数多くの講演を通じて、施設の真の姿を伝え続けている。

著者紹介

連載実は知らない老人ホームの真実

誰も書かなかった老人ホーム

誰も書かなかった老人ホーム

小嶋 勝利

祥伝社新書

老人ホームに入ったほうがいいのか? 入るとすればどのホームがいいのか? そもそも老人ホームは種類が多すぎてどういう区別なのかわからない。お金をかければかけただけのことはあるのか? 老人ホームに合う人と合わない人が…

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