入居者満足度を高めるための取り組みとは
多くの老人ホームの使命の一つに、入居者満足度を高める取り組みがあります。その取り組みの中で、一番オーソドックスなものが「旅行」ではないでしょうか。
結論から申し上げます。老人ホームの「旅行」は多額の費用がかかります。1泊2日のバスを使った小旅行で一人当たり十数万円は楽にかかります。しかもこの金額は原価です。旅行代理店などを通せばこの数倍の金額がかかるでしょう。
われわれ健常者にとっては、大したことではない小旅行も、介護が必要な高齢者にとっては本当に高価なものになるのです。かつて私が働いていた老人ホームの入居者の方から「若いうちにどんどん旅行に行っておきなさい。私のようになったら旅行なんてそう簡単に行かれなくなるのだから」と言われたことが思い出されます。
老人ホームで旅行を行なう場合は、まず旅行を企画するところから始めます。あらかじめ参加者の抽出をしておくのですが、参加者の状態を考慮して目的地と日程を決定します。ちなみに、日程は1泊2日になります。その理由は後で記します。
目的地は、首都圏の場合は箱根や熱海といった有名観光地がオーソドックスなところです。日程、場所が決まれば、次にやることは下見です。日程に合わせ数名の介護職員がチームを編成し、行程を細かくつめていきます。
一番重要な課題はトイレの確保です。車いすの入居者も多く、さらにオムツ交換が必要な入居者もいるので、それに適した設備が完備されている休憩場所を探さなければなりません。さらに、宿泊先のホテルの選定も重要です。通常は小規模のホテルや旅館の一部を貸し切りで利用するのですが、ホテル側の理解を得ることができずに、宿泊先の選定にとても苦労をしたことを思い出します。
さらに、旅行の楽しみの一つ、入浴と食事についての打ち合わせを行ないます。入浴については、どのようなフォーメーションでしてもらうのかなど、細かく検討します。万一の時に備えてどう対応するのかも考えなくてはなりません。ちなみに、入浴時の万一の時とは、何も入居者が溺れるということではありません。温泉内で便を漏らした場合の対応策のことを言います。介護職員であれば当たり前によくある話です。