本格的な「多死社会」となった日本。故人の遺産をめぐり、親族間で醜い争いになるケースが多発しています。「きょうだいと絶縁してしまった」「財産を手放す羽目になった」といった後悔をしないためにも、トラブル事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
子のない共働きの夫婦は、一等地に2つの不動産を保有
今回のご相談者は、大学教授のS本さんです。S本さんは国立大学を卒業後、民間企業に就職しましたが、数年勤務したのちに退職。母校の大学院に進学して博士号を取得したあと、海外の複数の研究機関での研究職を経て、現在は都内の私立大学の教授として教壇に立っています。指導の対象は学生だけでなく、夜間は社会人にも講義も行い、幅広い層の教育に力を注いでいます。ほかにも、日本全国の研究機関等に招かれて講演をするほか、セミナー講師を務めたり、書籍の執筆をするなど、精力的に活動しています。
S本さんご夫婦は中学校の同級生で、奥様とは40年近いつきあいです。子どもに恵まれなかったこともあり、お互いのキャリアを尊重しながら、いまの生活を築いてきました。
結婚で実家を離れたあと、都心部の現在の住まいを購入。その後、奥様が仕事場にしている超一等地のマンションも購入しましたが、両方とも夫婦の共有名義です。S本さんの奥様はファッション関係の会社を経営しており、結婚前からずっと仕事を継続してきました。もし子どもがいれば、また違った生活になったのかもしれませんが、現在までのご夫婦の働きで、一等地に2つの不動産を購入することができたのです。
まだ50代のおふたりですが、60代に入る前に、先々のことをきちんとしておきたいと、ずっと考えてきたとのことです。また、夫婦で築いた財産を受け継ぐ子どもがいないため、自分たちの財産については自分たちの意思で決めておきたいと思い、相談に来られたそうです。
S本さん夫婦はともに長子の長男・長女で、それぞれ弟、妹がいます。それぞれの両親は数年前に他界しています。
●相続人関係図
遺言作成者:夫 S本博史さん 50代 大学教授
妻 S本洋子さん 50代 会社経営
推定相続人:弟妹
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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