本格的な「多死社会」となった日本。故人の遺産をめぐり、親族間で醜い争いになるケースが多発しています。「きょうだいと絶縁してしまった」「財産を手放す羽目になった」といった後悔をしないためにも、トラブル事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。
「ふたりで築いた財産が、弟妹にわたるのは理不尽」
S本さん夫婦のように子どもがいない場合は、どちらかが亡くなったとき、相続の権利は、亡くなった人の親やきょうだいにも及びます。打ち合わせの際、S本さん夫婦から下記のような考えを聞きました。
「財産が親から相続したものであれば、きょうだいに渡すのはわからなくもないです。ですが私たちの場合は、ふたりでコツコツ築いた財産です。それをいくら法律だからとはいえ、助けてもらったこともない弟妹に相続させるのは、ちょっと違うのではないかな、と」
「財産には現金や有価証券もありますが、これらは相続税の支払いのために取っておきたいです。もし弟妹にまで相続させるとなると、不動産を手放すことになり、その後の生活が心配です」
自分のきょうだいならまだしも、配偶者のきょうだいはそもそも他人ですから、いざ相続が発生した際、感情論にもなりかねません。無用なトラブルの種は排除したいというのが、S本さん夫婦の本心とのことでした。
そこでS本さん夫婦は、互いに「全財産を配偶者に相続させる」とした公正証書遺言を作成しました。
きょうだいには「遺留分の請求権」がないため、S本さん夫婦の相続発生時には、配偶者に全財産をわたすことができます。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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