本格的な「多死社会」となった日本。故人の遺産をめぐり、親族間で醜い争いになるケースが多発しています。「きょうだいと絶縁してしまった」「財産を手放す羽目になった」といった後悔をしないためにも、トラブル事例を見ていきましょう。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに解説します。

長女と四女、共同購入した豪華マンションで共同生活

今回の相談者は70代のS藤Y美さんと、妹で60代のK子さんです。ふたりは5人きょうだいの長子と末子で、第2子にあたる長男以外は全員女性というきょうだい構成です。

 

 

Y美さんと四女のK子さんはちょうど一回り年が離れているのですが、不思議と気が合い、いままでけんかをしたこともありません。ほかの3人は全員既婚者で子どもをもっていますが、相談者のふたりは独身を通し、ずっと大手企業に勤務してきました。当然、お金もしっかり貯めています。

 

20年ほど前、実家の近くの環境のよい場所に瀟洒な分譲マンションが建ったとき、Y美さんとK子さんは貯金を半分ずつ出し合い、共有名義で4LDKの物件を購入しました。

 

そのマンションは最寄り駅まで歩いて8分程度。近くには商店街や公園もあり、緑が多くとても快適です。ふたりは思い切ってマンションを購入して本当によかったと満足しており、また、これからもお互いに助け合って、一緒に生活していきたいと考えています。

 

●相続人関係図

遺言作成者:長女 S藤Y美さん70代 定年後リタイア
      四女 S藤K子さん60代 定年後リタイア
推定相続人:兄弟姉妹

 

あああ
長姉と末妹、これからも助け合って、一緒に生活していきたい…

万一の際は、残ったほうがマンションを相続したい

先に定年を迎えた姉のY美さんは、おしゃれを楽しみ趣味を満喫する悠々自適の生活をしていましたが、いよいよ妹のK子さんも定年を迎え、ともに時間ができてきました。

 

活動的なY美さんは70代に見えないほど若々しく、体も健康なのですが、一緒に生活するK子さんと将来の話をすることも増えてきたそうです。

 

いまの時代、皆さん長寿になってきましたが、とはいえ先のことはだれにもわかりません。どちらが先に亡くなって相続が発生しても、残されたほうが手続きに困ったり、ほかのきょうだいともめたりすることなく、これまで通りマンションに住み続けられるようにしておきたいと、筆者のところに相談に見えました。

 

いまのところ、きょうだいの仲は円満で争いごとはありません。

 

「ほかの2人の姉妹はもちろん、長男とも仲良くしています。みんな理解がありますし、私たちふたりのマンションの権利を要求する人はいないと思っていますが、それでもやはり、きちんと文書にしたほうが安心できるかと思って…」

 

「姉とは一回り年齢が離れていますけれど、どちらが先に逝くかは神様しかわかりませんから。残ったほうが大変な思いをしないように、準備しておきたいです」

 

その言葉を聞き、筆者はすぐ遺言書の作成を提案しました。先に亡くなったほうが所有するマンションの権利は、残されたほうに相続させる、という内容の公正証書遺言を、双方が作成するというものです。

 

もちろん、Y美さんとK子さんがそれぞれ自分のお金を出し合って買ったマンションですから、ほかの兄弟姉妹もその内容で遺言を作ることに異論はないということです。

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本記事は、株式会社夢相続が運営するサイトに掲載された相談事例を転載・再編集したものです。

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